Monthly Archives: 11月 2013

【平成25年度奨学生インタビュー⑤】西原瑠一さん(ピアノ)

今日の奨学生インタビューは、奨学生45名中、最年少の西原瑠一さん(桐朋学園大学・ピアノ専攻1年)。
西原さんは、2011年に第15回日本モーツァルト音楽コンクール第3位を受賞されるなど、着実に活躍の場を広げていらっしゃいます。
来年3月の演奏回では、23日昼の部に出演してくださいます。曲目は、ラフマニノフの《ピアノソナタ》第2番から第1楽章。
どんな演奏をしてくださるのか、今から楽しみです。

 

西原さん(桐朋)

 

――桐朋学園大学でピアノを専攻していらっしゃる西原さん。いつ、どのようにしてピアノを始められましたか?

4歳の時だったと思います。ジブリの映画「耳をすませば」を見ていてヴァイオリンを習いたくなって、両親にお願いしたのですが反対されてしまいました。でも何か楽器を習いたかったので、ピアノは?とお願いして習い始めたのがきっかけです。

 

 

――まぁ、ジブリがきっかけでしたか!もともと音楽が好きな少年だったのでしょうね!4歳からピアノを始められてから今日まで、たくさんの本番を踏んでこられたと思いますが、一番印象に残っている舞台はありますか?

 一番印象深かった本番は、今年の6月にウィーンで開催されたウィーン・ベートーヴェン国際ピアノコンクールでの舞台です。今まで海外のコンクールやセミナーを受けたことがなかったので、海外での舞台が初めてということで不安でしたが、ウィーンに着いてから本番当日までの間にたくさんの刺激を受けて、とても新鮮な感覚で本番に臨むことができました。

 

 

――日本のクラシック音楽のレヴェルも非常に高いものだとわたしは思いますが、海外となるとレヴェル以前の問題で、勝手が全く異なりますよね。文化が異なるし、言葉も異なります。いつもとは違う環境の中でコンクールを受けられたことは、今後大きな財産になるのではないでしょうか。
そんな西原さんですが、尊敬している作曲家はいますか?

どの作曲家もとても尊敬しています。特に好きな作曲家はモーツァルトです。

 

――モーツァルトですか。西原さんは、2011年に開催された日本モーツァルト音楽コンクールでも3位を受賞なさっています。きっと素晴らしいモーツァルトを奏でられるんでしょうね。ところで、コンクールや演奏家などの本番中は、どのようなことを考えながら演奏なさっているのですか?

僕はすごく緊張してしまう方なので、必死に弾いてしまっているだけの時もありますが、演奏中に大切にしたいと思っているのは「伝える意識」です。普段は一人でピアノと向き合って練習しているので、本番も緊張すると、この意識を持って演奏することが意外と難しいのですが、聴いて下さっている方々に音楽を伝えようと演奏しています。

 

 

――なるほど、聴衆を意識した演奏を心がけていらっしゃるのですね。わたしも昔、ピアノを弾いていたのですが、師匠から「弾いている自分を見ている自分を感じるように」と何度も言われたことがあります。一歩引いて自分を見る感覚が必要なのでしょうね。
さて、西原さんは来年3月の演奏会で、ラフマニノフのピアノソナタ第2番から第1楽章を演奏してくださいます。ラフマニノフ特有のヴィルトゥオジティとロマンティシズムがたっぷり詰まった名曲中の名曲ですよね。

ラフマニノフのピアノソナタ第2番は、中学生の時からずっと弾きたいと思っていた大好きな曲でした。今こうしてこの曲を舞台で弾けるのが本当に嬉しいです。来年の3月の演奏会では、この曲の素晴らしさが聴いて下さる方々に伝えられるような演奏をしたいです。

 

――この曲は西原さんの憧れの曲だったのですね。そのような演奏を聴くことが出来るなんて、本当に楽しみです。期待しています!
最後になりましたが、将来の夢を教えてくださいますか?

 生涯を通して国際的なコンサート・ピアニストになりたいです!

 

――今回、奨学生45名の中でも最年少でいらっしゃる西原瑠一さん。とても最年少とは思えない、しっかりとした考えの持ち主であることがよく分かりました。日本だけではなく、海外にも活動の場を広げつつある西原さんをこれからも応援したいと思います。ありがとうございました!

ボリス・ベレゾフスキー ピアノ・リサイタル レポート

去る11月23日、青山音楽記念館バロックザールにて、ボリス・ベレゾフスキー ピアノ・リサイタルが開催されました。
当日のプログラムは以下のものでした。

ラフマニノフ: 前奏曲集から
         変ロ短調 op.32-2
         ホ長調 op.32-3
         ホ短調 op.32-4
         ト長調 op.32-5
         イ長調 op.32-9
         ロ長調 op.32-10
         変ニ長調 op.32-13

ラフマニノフ: ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 op.36

***

ドビュッシー:前奏曲集第1巻より 
           デルフィの舞姫たち
           野を渡る風
           雪の上の足あと
           西風の見たもの
           とだえたセレナード
           亜麻色の髪の乙女
           ミンストレル

ラヴェル: 夜のガスパール

ベレゾフスキー1

 

前半は、ベレゾフスキーの十八番ラフマニノフ。
前奏曲からの抜粋では、ホールと聴衆、そして響きの反応を確かめるように、慎重なタッチで弾き進められていきました。
ベレゾフスキーの大きな手にかかると、スタンウェイのフルコンも小さく見えてしまいますね。

ラフマニノフのソナタ第2番では、前奏曲で見られた慎重さは取り払われ、ベレゾフスキーの世界観が目の前に広がっていくようなスケールの大きさが感じられました。

実は開演前、ベレゾフスキーのエネルギーがホールの容量を超えてしまうのではないかという心配をしていました。
特に、ラフマニノフのソナタ第2番は、大きな音量で弾き切るようなパッセージが多く見られます。その際に、音が割れてしまわないか・・・と懸念していたのです。
しかしながら、いざ始まってみると、ベレゾフスキーの出す音は、ただ単純に大きいだけではなく、ピアノ全体が鳴り響くような、深みのあるものでした。
心配は杞憂に終わったようです!

個人的に、第2楽章は特筆すべき仕上がりだったと思います。
劇的かつ熱情的な第1楽章のあと、ベレゾフスキーの指から紡ぎ出された第2楽章の主題の美しさ。
それはそれは甘く、優美な音だったのです。
古いアルバムをめくりながら、昔に訪れた、思い出の情景写真を眺めているような、不思議な気持ちになりました。

後半は、ベレゾフスキーが演奏を熱望していたという、フランスもの。
前半のラフマニノフから一転、タッチが変わりました。
ラフマニノフの時は、身体全体から鍵盤を押していましたが、ドビュッシー、ラヴェルに関しては、手首で軽く支えながら、指先で演奏しているように見えました。
ドビュッシーとラヴェルにおいても、それぞれにタッチを変えており、ドビュッシーは指先の腹を用いていることが多く、全体に霧のかかったような、パステル調の音色が聞こえてきました。
ラヴェルは、指の先端でカリカリと弾くような鋭いタッチで、ペダルも必要最小限の量しか用いていませんでした。

圧巻だったのは、ラヴェル《夜のガスパール》から〈スカルボ〉。
ラヴェルは、当時「最高にピアニスティックな作品」であるとされていた、バラキレフの《イスラメイ》を技巧的に圧倒することの出来る作品を書くと明言し、その結果作曲されたのが、この〈スカルボ〉でした。
そのラヴェルの意気込みは、この楽曲に見られる、極めて演奏困難な連打音、幅広い音域、連続する重音に十二分に現れていますが、ベレゾフスキーは完璧なまでにそれらを弾き切ったのです。
しかも、こちらにその難しさを決して感じさせることなく、楽々と弾きこなしました。
もう、お見事としか言いようがありません。感嘆のため息があちこちで聞こえてきました。

ベレゾフスキーの演奏に対するイメージは、これまでロシアものが強かったのですが、ドビュッシーやラヴェルの演奏も素晴らしく、今回の演奏会ではベレゾフスキーの新たな一面を垣間見ることが出来ました。

アンコールでは、ドビュッシーの《映像第1集》から〈水に映る影〉、〈動き〉、そしてチャイコフスキーの《四季》から〈10月〉と、立て続けに3曲も演奏してくれました!
これには、お客さまからも「ブラビッシモ!」の声が。

ベレゾフスキー2

なによりも、こんなに演奏家と聴衆との距離が近いのです!
ベレゾフスキーもお客さまの熱狂が伝わったのか、終演後は笑顔でファンサービスに応じてくれました。
そして「このホールで演奏することが出来て、とても気分が良かったよ」という言葉を残してくれました。

 

今年の青山財団主催による公演も、これが見納め。
次回は、年が明けたあと、1月30日のベルリンフィル八重奏団による演奏会です。
こちらのチケットは早くも完売となりましたが、今後もたくさんの演奏会を企画しております。
機会がありましたら、ぜひお越しくださいね!

【平成25年度奨学生インタビュー④】荒川文吉さん(オーボエ)

奨学生インタビュー第4回目は、今年開催された第82回日本音楽コンクールのオーボエ部門で見事、第2位を受賞された、荒川文吉さんをお迎えします。
荒川さんは現在、東京藝術大学音楽学部の4年生。来年3月の奨学生によるコンサート『若き音楽家たちによる音の祭典』では、23日昼の部に出演なさいます。

荒川文吉さん

 

 

――今日は宜しくお願いします。
早速ですが、荒川さん、日本音楽コンクールオーボエ部門2位おめでとうございます!日本音楽コンクールと言えば、国内で最も難しいコンクールの一つで、若手音楽家の登竜門のような存在ですが、このコンクールを受けようと思われたきっかけを教えていただけますか。

ありがとうございます。
大学1年生のときに初めてこのコンクールを受けたのですが、そのときは1次で落ちてしまったので、今回再挑戦しようと思い受けました。

 

――なるほど、満を持しての再挑戦だったわけですね。3年前は1次敗退だったのに、今年は本選まで進み、2位受賞ということは、この3年間で確実に実力をつけられたということ、本当に素晴らしいです。
日本音楽コンクールは予選を3度経た後に本選があるので、精神的・体力的にも本当に大変だったと思うのですが、いずれも思うように演奏出来ましたか?

各予選を通して、コンクールだからと気負いすぎずに、今の自分にできる最大限の表現を届けたいと思って演奏しました。特に2次予選で演奏したシューマンの3つのロマンスに関しては、納得のいく演奏ができたと思っています。

 

――本選では何を演奏なさいましたか?

共通課題のバッハのパルティータと、ドラティのデュオ・コンチェルタンテと、北爪道夫さんの歌う葦という新曲を演奏しました。

 

――3回の予選のあとにそのプログラムはヘヴィですね・・・。本選には4人しか残らないわけですから、さぞかし周囲からのプレッシャーを感じられていたことと思います・・・。

感じましたね(笑)
2年前に受けた別のコンクールでは、本選に残ったという実感がなく、プレッシャーを感じずに演奏できましたが、今回は学生最後の年だということもあり、受けるからにはいい結果を出したいと思っていたので、予選の前はなんとなくずっと緊張していたように思います。

 

――でも、そのプレッシャーや緊張がきっと良い方向に向いたのではないかと思います。
このコンクールで、荒川さんは聴衆賞でもある岩谷賞も受賞なさっていますが、演奏家として聴衆の方から評価していただけるのはとても嬉しいことですよね。
舞台にはいつもどのような気持ちで立っていらっしゃるのでしょうか。

音楽を奏でること自体の喜びももちろんありますが、やはり聴いてくださる方がいて、その方たちに喜んでいただけることが何よりの幸せだと僕は思っています。
作曲家たちが残してくれた名曲の数々は本当に宝物です。こんなにも素晴らしい音楽があるのだということを、たくさんの方と共有していけたらいいなと思います。

 

――さきほどのお話にもありましたが、今年は学生生活最後の年でいらっしゃるとのこと。東京藝術大学では、どのような大学生活を送られていますか?

単位はほとんど取り終わっているので授業はあまりありませんが、リードを作る工具が大学にあるので、そのために通っているようなところがあります(笑)
オーケストラや室内楽の勉強も、学生のうちに学べることをたくさん吸収したいと思っています。

 

――リードを作る工具・・・全くの素人であるわたしからすると、どのような工具かとても気になるところですが、とても貴重な工具であることは良く分かりました(笑)。
大学卒業後はどのような進路をお考えでしょうか?

大学院に残って勉強を続けるつもりです。その間にオーケストラのオーディションもどんどん受けていきたいと考えています。
――ところで、来年3月に京都バロックザールで『若き音楽家たちによる音の祭典』というコンサートで演奏を披露してくださいますが、その時のプログラムがドラニシニコワの《ポエム》。
わたしは今まで、この作曲家や曲を知りませんでした。

この曲はオーボエのレパートリーの中ではマイナーな部類に入ると思いますが、哀愁のある曲想が味わい深い作品です。
オーボエの持つ音色の美しさや息の長いフレーズに注目してお聴きいただけると嬉しいです。

 

――荒川さんのプログラムを見て、初めてこの楽曲を調べて聴いてみたのですが、本当に抒情的で美しい。オーボエの音色に見事にマッチしています。それでいて、リズミカルや技巧的な面もあり、オーボエの色々な顔を楽しめる曲ですよね。ピアノ伴奏にも見せ場がたくさんある曲です。当日の演奏を今から楽しみにしています!
それでは最後になりましたが、荒川さんの夢を教えてくださいますか。

誰かと一緒に演奏することが好きなので、オーケストラに入って活動していきたいです。『あなたの演奏が聴きたい』と言っていただけるような演奏家になれたらいいなと思います。音楽に携わっていられることに感謝しながら、これからも日々努力を重ねていきたいと思います。

 

 

 

コンクール直後、お疲れでいらっしゃる時にもかかわらず、快くインタビューを引き受けてくださった荒川さん。ドラニシニコワの《ポエム》は以前から演奏してみたいと思っていた曲の一つだったことを教えてくださいました。
木の温かみを感じるバロックザールには、木管楽器の音色がとても合いますので、荒川さんのオーボエも美しく響くことと思います。
みなさんも是非、3月の演奏会で荒川さんをはじめ、奨学生の方々がこの1年間学んできた成果を聴きにいらしてくださいね!
(演奏会のためのページは現在作成中です。もうしばらくお待ちください)

【平成25年度奨学生インタビュー③】水谷桃子さん(ピアノ)

8週間にわたって青山財団奨学生の横顔を紹介するシリーズも今日で第3回目となりました。
今日お話を伺うのは、東京藝術大学音楽学部ピアノ専攻4年に在籍している水谷桃子さんです。
水谷さんは、2004年~2008年にかけて、ピティナ・ピアノコンペティションE級金賞、G級銀賞、特級準金賞を次々と受賞、国内外のコンサートに数多く出演している、期待の若手ピアニストさんです。

彼女は、来年3月16日の奨学生コンサート昼の部に出演してくれます。

水谷さん(東藝)

 

こんにちは、今日は宜しくお願いします。
早速ですが、東京藝術大学でピアノを専攻していらっしゃる水谷さん、ピアノとは、いつどのようにして出会われましたか?

私の母も音楽をやっていたので、生まれた時からグランドピアノが家にありました。
3、4歳の頃から遊びのような感じで自然に始めました。

 

なるほど、小さい頃からピアノや音楽が身近でいらっしゃったのですね。そういえば、音楽雑誌で何度か、水谷さんがコンクールに出場なさった時のレポートやマスタークラスで勉強なさった記事などを拝読したことがあります。水谷さんは幼少期から多くのコンクールに出場・入賞を果たし、コンサートにもたくさん出演なさっていますが、その中で記憶に残っている本番はありますか?

17 歳の時、小林研一郎先生の指揮で日フィルとグリーグのコンチェルトを協演させて頂きました。
日本を代表する指揮者、オーケストラの皆さんとご一緒するわけですから、私みたいな子供が・・とナーバスになってしまいました。
ですが、本番前の楽屋でふと「安全性にこだわってチマチマ弾くより、大胆に表現してみよう!」と、とてもポジティブな厚かましい気持ちになりました(笑)  。
本番では小林先生、オーケストラの方々、そして聴衆の皆様に「こんな感じでいかがでしょうか?」と問いかける感じで私の音楽を掲示してみました。
それに対して皆さん受け入れてくださっている!という感覚を受けました。
音楽とは年齢、立場に関係なく会話できるものなのだとその時実感しました。

 

厚かましくないですよ!素晴らしい体験をなさったのですね!でも、安全性にこだわることをやめて、大胆に音楽を表現しようと思えたのは、水谷さんがその日までに血の滲むような猛練習を重ねていらっしゃったからだと思います・・・。毎日どのような学生生活を送って、勉強をなさっているのか気になるところです。

東京での女子大生生活というものに、以前はとても華やかなイメージを持っていましたが、実際は学校に行って授業を受けて、空き部屋を求めながら夜まで練習して、クタクタになって帰るという毎日です。
ほんのたまに遊びに行ったりしますが、幸い常にやらなければならない曲をたくさん抱えているという状態なので、間に合わせるためにはインドアにならざるを得ません。

普通科高校出身の私にとって、学校で和声や音楽史など音楽を裏付けることに役立つ知識が学べるのは有難いです。
先生方もどんな質問にも答えて下さいますし、恵まれた環境だと思います。
また、同級生、先輩、後輩の別なく、音楽的に良い刺激を与えてくれる友達が多くいて、とてもお世話になっています(笑)

 

充実した学生生活を送られているのですね。そしてやはり、ピアノと向き合った生活を送っていらっしゃることが分かりました。
水谷さんがピアノを演奏する時に、気をつけていることについて教えてください。 

テクニックと音楽のバランスについてです。テクニックを習得しなければ、いくら素晴らしい音楽を感じているとしても、表現は出来ません。
テクニックに問題がないということを前提にいかに自分にしか出来ない音楽が伝えられるかを日々考えています。

あと、解釈について、毎日新しいアイディアを発見していくことに喜びを感じます。それらが演奏家としての個性になっていくわけですが、独りよがりになってしまわないように気をつけています。

 

水谷さんのおっしゃっていること、よく分かります。
テクニックをまず身につけていなければ、自分がしたいと思う表現も出来ませんよね。
表現に手指がついていきません。かといって、テクニックだけの演奏は面白くない。
テクニックと表現力のバランスを取りつつ、自分だけの解釈を見つけることは非常に大事なことだと思います。
独りよがりにならないということも、演奏家として重要な項目の一つですね。
水谷さんのお話を聞いていると、ステージの裏側や舞台に立つ直前の演奏家さんの心理といったものを知りたくなります。

昔はおまじない的な色々決まり事があったのですが、海外で弾くことも増え、面倒になって今は何の決まり事もなく自然に過ごしています。
ひとつ心がけていることは、本番前にナーバスになっても、周りの人に気づかれないように、敢えて楽観的に振舞うことです。

 

色々な演奏家さんのタイプがあると思いますが、水谷さんは自分の心理状態をなるべく見せずにいらっしゃるのですね。いやぁ、強いですね。昔なさっていた「おまじない的な決まり事」も少し気になりますが(笑)。
ところで、来年3月の演奏会では、ショパンの《木枯らし》に加え、カプースチンの変奏曲という珍しい曲を演奏してくださいます。
ここ数年でカプースチンを演奏するピアニストもかなり増えてきたように思いますが、まだまだ一般的には知られていない作曲家ですよね。 

カプースチンを初めて聴く方は、これはジャズなの?クラシックなの?とびっくりされると思います。ほとんどジャズの和声感、リズム感で私にとってカプースチンを練習するのはベートーヴェンやブラームスなどの練習の合間の息抜きです。
決して構えて一生懸命に弾くものではないと思っています。とは言うものの、カプースチン自身優れたピアニストですから、技巧的にはものすごく難しく、かなり精密な練習が必要なのですが・・・

現代人にとってはとても親しみやすい曲だと思うので気楽に聴いて頂けたらと思います!

 

よく分かります。
ウクライナ生まれのカプースチンは、ピアニストで腕を鳴らしただけあって、超絶技巧の持ち主ですよね。彼の《練習曲集》のCDは、自作自演で素晴らしい出来です。
また、ジャズとクラシックを融合させた作曲家で、彼の楽曲には即興的な要素が大いにあります。「遊び」が必要な作曲家ですよね。
超絶技巧の中に「遊び」が光る、水谷さんの演奏をとても楽しみにしています!

さて、水谷さんは来年3月で東京藝大を卒業されますが、目標や夢があったら教えてくださいますか。 

まだまだ私の知らない音楽がいっぱいあるので、勉強できるうちにたくさん勉強して、私のスタイルを確立するというよりは、常にフレキシブルでありたいと思います。そして、結果として常に聴衆から求められる演奏家でいられたら本当に幸せなことだと思っています。

 

小さい頃より沢山の舞台に立って来られた水谷さん、ピアノに対してひたむきな情熱を傾けていらっしゃいます。
特に印象的であったのが、最後にお話してくださった言葉にもあるように「フレキシブル」であることを大事にしていらっしゃる点です。同時に、「聴衆ありきの音楽」を目指していらっしゃる演奏家さんでいらっしゃることが良く分かりました。
我々聴衆も、音楽を演奏家と分かち合いたいという気持ちがありますので、水谷さんからこのようなお話をお伺い出来て、とても嬉しくなりました。
今後のご活躍を楽しみにしています。ありがとうございました!

11月16日チケット販売開始!(エルトマン&メストレ、アーノルド)

ここ最近、厳しい冷え込みが続いていますね。
冬の足音も、もうすぐそこまで近づいてきているような気がします。

 

さて、今日は11月16日にチケット販売が開始される、2つの主催公演のご案内をさせていただきます。

ひとつめは、平成26年4月27日(日・15時開演)に開催される、モイツァ・エルトマンとグザヴィエ・ドゥ・メストレのデュオ・リサイタルです。

エルトマン

 

バロックザールでは久方ぶりの歌手登場とあり、大注目の公演です。
エルトマンは、2012年に東京で初リサイタルを開催以来、クラシックファンの中で「新星歌姫現る」とかなり噂になった歌い手さんです。
音楽評論家の方々もこぞって彼女の歌声を絶賛しており、2014年の来日に今から熱い視線が注がれています。
メストレは、知る人ぞ知る、ハープ界の貴公子。25歳の時に、ウィーン・フィルのソロ・ハーピストに就任後、飛ぶ鳥を落とす勢いで世界を席巻してきました。

エルトマン&メストレ

写真の通り、2人共に美男・美女です・・・しかし凄いのはそれだけではありません。
この2人、超絶技巧の持ち主であると同時に、非常に豊かな音楽を聴かせてくれるのです(天は二物も三物も与えました・・・)。

今回のコンサート企画は2人の間で数年前から温められていたものらしく、まさに奇跡のデュオ実現!です。
プログラムはシューベルトやR.シュトラウスの歌曲をはじめ、モーツァルトやベッリーニ、ヴェルディのオペラ・アリアなど、多様な方面から彼女たちの魅力を味わえるものとなっています。
もちろん、メストレのハープ独奏もありますよ!このチャンスをお見逃しなく!!

 

続いては平成26年5月10日(土・15時開演)、ピアニスト シュテファン・アーノルドのピアノ・リサイタル《展覧会の絵》

アーノルド 

2004年からウィーン国立音楽大学ピアノ科教授を務める、シュテファン・アーノルド。数々の国際コンクール入賞歴を誇るピアニストとして、ヨーロッパに留まらず世界中でその演奏が絶賛されています。
昨年開催された、東京・大阪でのマスター・クラスでは、その明晰な指導法から見える、洗練されたピアニズムと圧倒的な技巧で、聴衆を大いに魅了しました。
今回は、そんなアーノルドによる、京都(関西)初のピアノ・リサイタルです。

stefan türe

アーノルドのレパートリーは大変広く、その全てにおいて、まるで音の魔術師のような演奏を繰り広げます。

甘いタッチで人々を酔わせたかと思えば、次の瞬間、こちらを圧倒させるかのようなパワフルな音を響かせる――彼のピアノを聴けば、いつも、たちまちそのピアニズムに引き込まれてしまうことに驚かされます。

今回のプログラムの要は《展覧会の絵》。
この楽曲の名演はこれまで数多く生まれてきましたが、ウィーンのピアニズムを正統に引き継いだアーノルドによる《展覧会の絵》も、みなさんの記憶に残り続ける演奏を繰り広げてくれることは間違いありません。

「より沢山のみなさんにピアノ演奏を提供したい」という、音楽教育家でもあるアーノルド自身の希望もあり、今回のチケットは3,000円と破格の値段となっております。
「“コンサート”とは演奏家一人で行うものではありません。逆に、演奏家と皆さんが時間を共有する場であると同時に、演奏家と聴衆とが対話する場なのです」と語るアーノルド、当日はぜひ、貴重で贅沢なひとときを、バロックザールで共有してください!!

【平成25年度奨学生インタビュー②】宇田奈津美さん(ギター)

前回、奨学生インタビューに答えてくださったヴァイオリン専攻の堀江君に引き続き、今日は相愛大学でギターを専攻している宇田奈津美さんからお話をお伺いします。

 

宇田さん(相愛)

宇田さんは、2004年に日本ギターコンクール小学生部門で第1位を受賞後、同コンクール中学生部門、高校生部門の両方を制覇しました。さらに、2010年には、同コンクールの最高部門であるオヌール・ソロの部で第3位に入賞するなど、いま期待の若手ギタリストさんです。
来年3月16日・23日両日にわたってバロックザールで開催される『若手音楽家たちによる音の祭典』では、23日の夜の部に出演してくださいます。

それでは、ギターや音楽のお話を聞いてみましょう。

 

――相愛大学でギターを学ばれている宇田さん。ギターは何歳から弾いていらっしゃいますか?

5歳の誕生日の時に、祖母がクラシックギターをプレゼントしてくれたことがきっかけでギターを始めました。

 

――そんなに小さい頃からギターを弾いていらっしゃるのですか?!驚きました。わたしのイメージでは、5歳の女の子の手指にはギターは大きすぎるような気がするのですが・・・。宇田さんは、手に対して楽器が大きかったり、弦が届かなかったり、そのような苦労はなかったのでしょうか?

私は幸いなことに、幼い頃から手が大きい方だったので、あまりそういった苦労はありませんでした。

 

――そうなんですか、楽器演奏という意味では、非常に良い手に恵まれていたということですね。5歳から演奏されていたということは、もう20年近くギターとの付き合いがあるということだと思いますが、楽器の魅力を教えてくださいますか。

ギターの魅力は、人の心にそっと寄り添い、癒やしてくれるような音色を持っているところだと思います。

 

――ギターはとても優しい音色を持っていますよね。また、鋭いリズムや情熱的な音楽も奏でることが出来るので、とても魅力的な楽器だと思います。
ところで、相愛大学ではどのような学生生活を送っていらっしゃいますか?

いろんな楽器の人達との交流があり、毎日刺激を受けていて本当に楽しく充実した学生生活を送っています。そして今、私は作曲や編曲などにも興味を持っていて、「作・編曲法」という授業にも力を入れています。

 

――「作・編曲法」ですか!確かに、他の楽器用に書かれた楽曲をギター用に編曲出来たら、レパートリーもぐっと広がりますものね。
このように、ギター演奏に勉学に、毎日励まれている宇田さんですが、演奏時に、宇田さんが最も気をつけていらっしゃることがあれば教えてください。

ギターは他の楽器に比べると音量が小さい楽器ですが、多彩な音色の変化や細部の表現が出来るという利点があるので、より魅力的な演奏になるように心がけています。

 

――来年3月に予定されている、奨学生成果披露演奏会『若き音楽家たちによる音の祭典』では、バリオスやアルベニスの楽曲を演奏してくださいますよね。
アルベニスはスペインの作曲家ですが、バリオスはパラグアイの作曲家らしいですね。パラグアイでは、最も偉大な作曲家として、とても尊敬されている存在だとか
どんな曲なのか、少しだけ教えてもらえますか?

バリオスの《最後のトレモロ》は、ギター独自の同音反復によるトレモロで、そしてこの曲は哀愁が漂っているメロディーが特徴なので、それをトレモロ奏法で表現するところが聴き所です。

そして、アルベニスの〈朱色の塔〉(《特性的小品集作品92》の最後に置かれた第12曲)は、スペイン的な情緒に溢れている曲で、原曲はピアノですが、ギター編曲の法があたかもオリジナルのように聞こえたりします。そこにギターならではの奏法でハーモニクスやラスゲアード(弦のかきならし)を取り入れることによって、さらにスペイン的な広がりを出します。

 

――2曲共に、とても面白そうな曲ですね。宇田さんが今日教えてくださった、トレモロ奏法やハーモニクス、ラスゲアードといったギターならではの演奏法にも注目しながら、当日の演奏を拝聴したいと思います。
さて、最後になりましたが、宇田さんは将来、どのような音楽家になりたいですか?

私は音楽を追究していく上で、「ここまで」というものは決して無いと思うので、いくつになっても追求し、進化していく音楽家(芸術家)になりたいと思います。これが私の夢であり、目標であります。

 

――堀江君(前回のインタビューに答えてくださった、京都芸大のヴァイオリン専攻の学生さん)も同様のことをおっしゃっていたことを思い出しました。
みなさん、本当に素晴らしい目標をお持ちでいらっしゃるので、感心してしまいます。物事を追求する限り、進化し続けることが出来るとわたしも信じています。諦めてしまえば、そこで終わりですから。これからも、高い志を持って、頑張ってください!
来年3月の演奏会を楽しみにしています!ありがとうございました。

【平成25年度奨学生インタビュー①】堀江恵太さん(ヴァイオリン)

当財団は、平成25年度より音楽を学ぶ極めて優秀な大学生に対し、奨学金を授与しています。
今年度は財団選考委員会により選定された6校(東京藝大、桐朋、愛知芸大、京都芸大、相愛、沖縄芸大)から45名の奨学生が選ばれました。
彼らは1年間、青山財団から奨学金を受けたあと、来年3月16・23日にバロックザールで『若き音楽家たちによる音の祭典』として、学んだ成果を演奏で披露してくれます。

それに先立ち、どんな方が青山財団の奨学生として学んでいらっしゃるのかをレポートしたいと思います。
インタビューに答えてくれた8人の方を1週間に1人ずつ、2ヶ月間にわたってご紹介します!

 

今日はその第1弾として、京都市立芸術大学音楽学部3回生に在籍する、堀江恵太さん(ヴァイオリン)をご紹介します。
堀江さんは、佐渡裕とスーパーキッズオーケストラで長年活躍しており、第6回横浜国際音楽コンクール大学生弦楽器部門第1位を受賞するなど、積極的に演奏活動をしている学生さんです。今年ブカレストで行われたジョルジュ・エネスコ国際音楽祭にハーモニアス室内オーケストラのメンバーとして参加し、2014年春にはグルジアでオーケストラとヴァイオリン協奏曲を共演する予定で、活躍の場を海外にも広げています。
そんな堀江さんに、音楽についてお話をお伺いしました。

 

堀江さん(京芸)

(コンサートでヴァイオリンを演奏する堀江さん)

 

――堀江さんはいつ、どのようにしてヴァイオリンと出会われましたか?
ヴァイオリンを始めたのは3歳。兄がチェロをやっていたもので、それをみて自分も何かやりたかったんだと思います。
いまの楽器に出会ったのは小5。自分のためにつくっていただいた新作で、10年間一緒に成長してくれている最愛の相棒です。

 

――なるほど、長い間ヴァイオリンと共に歩まれてきたわけですね。京都芸大に入学してからは、毎日が音楽の勉強だと思うのですが、大学ではどのような学生生活を送っていらっしゃいますか?
3回生の前期を終わったところで卒業単位は十分足りている(あと必修だけで卒業できる)のですが、せっかく環境があるので興味のある事や知っとかなきゃいけない事を勉強しようと思っています。もちろん一番時間がかかる「練習」を大切にしながらですが。中でも腰を据えて勉強しなくてはならない「古典」と、どうしても時間がかかってしまう「現代」は今しかできないと思って取り組んでいます。なんか真面目な話ばっかりしてすみません(笑)

 

――いえいえ、素晴らしい心がけです。ヴァイオリンが本当に好きでいらっしゃることがよく分かります。
堀江さんがヴァイオリンを演奏される上で、一番大切にしていらっしゃるものがありましたら教えてください。

1番って言われると「妥協しないこと」ですかね。。。自分がまだまだ足りてないから言うんですけど。単に、厳しく、というのではなくて、「愛」でもって妥協なしにいきたいです。

 

――妥協しない、ですか。確かに「このあたりで良いだろう」と妥協してしまうと、それ以上のものは絶対に目指せなくなってしまいますからね。では、そんな堀江さんが尊敬している作曲家や演奏家がいましたら是非教えてください。
作曲家の先生方はみなさん尊敬しております。その想いは勉強すればするほど、とくに曲にその人の生き方や人間味を感じて、強くなります。
演奏家はもう10年近くお世話になっている僕の師匠、ギオルギ・バブアゼ氏です。暖かな音色、自然かつ説得力のある表現、アンサンブルの妙技、そして人間としての暖かさ、優しさ。本当に愛にあふれていて、だれからも愛される先生。大好きです!(笑)

 

――バブアゼ先生、確かにとても優しいお顔をなさっていますね。お人柄が滲み出ていると思います。大好きな先生に師事できて、幸せですね!
ところで、来年の春にグルジアでヴァイオリン協奏曲を演奏される予定があるそうですが、今から楽しみですね。グルジアの人たちにヴァイオリンのどんなところを聴いてほしいですか?

詳細については、いまゴギ先生(バブアゼ先生の愛称)がグルジアのオーケストラと日程の調整をしてくださっているところです。先生が指揮をしてくださってブラームスのコンチェルトを演奏させていただく予定です。
これは僕の意見ですが、コンチェルトは、特に旋律楽器は、オーケストラの上で踊らせてもらうわけですから、対等に勝負とか考えたって仕方ありません。オケの音を良く聴いて、そこに自分の、ヴァイオリンの一番いいものを加える。優しいもの、美しいもの。もちろん守りにはいるわけではなくて。グルジアの人たちには「お、日本人ってこんな演奏するんだ!」とポジティブに思ってもらえたらな、と。グルジアで演奏した日本人はそんなに多くないと思いますから、責任重大です(笑)

 

――ほんと、グルジアで演奏とはなかなか無いチャンスですよね。堀江さんのことですから、当日まで厳しい練習をされて、良い本番を迎えられることと思います。頑張ってくださいね!
演奏会といえば、来年3月にも京都のバロックザールで青山財団の奨学生として、ヴァイオリン演奏を披露してくださいますね!この演奏会ではイザイ編曲サン=サーンス作曲:《ワルツ・カプリス》をチョイスされましたが、これはどんな曲ですか?

ヴィルトゥオーゾ的な難曲です。同じようなのがどんどん変化していくので暗譜が心配ですっていうのは半分冗談です。難しいし、派手なところもあるのですが、ワルツなので優しいところやかわいいところが伝わるよう弾きたいです。また、音で空間と時間をコントロールする魔法を上手に使いたいです。

 

――確かに暗譜は演奏家にとって悩ましいものですよね。でもきっと大丈夫!みなさん、堀江さんの魔法にかかるのを楽しみに待ってますよ!
最後に、将来の夢を教えてくださいますか?

ゴギ先生みたいな人間になりたいです。
優しい音楽をする演奏家。聴いた人が楽しくなったり、安らいだりする魔法が使えるようになりたいです。また、グルジアの音楽を大切に伝えていく演奏家になりたいです。

 

――素晴らしい師匠に出会えて、大好きなヴァイオリンを毎日弾いていらっしゃる堀江さん。グルジアの音楽を聴く機会はまだまだ少ないですから、バブアゼ先生や堀江さんを通じてもっと世に広がっていくことを期待しています。
これからも演奏活動、頑張ってくださいね!ありがとうございました。