Monthly Archives: 4月 2014

情報誌『ばろっくざーる』Vol. 48 が刊行されました!

情報誌『ばろっくざーる』Vol.48が刊行されました。
今号は、2013年度青山音楽賞の受賞者発表とインタビューや、今年バロックザールで開催される主催公演ラインナップを一挙公開。
そのほかに、新たに連載がスタートした「わたしはメロマーヌ」には、情報科学者の長尾真先生をお迎えして音楽愛好家としてのお話をお伺いしました。
どうぞご覧ください!

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情報誌『ばろっくざーる』Vol. 48 表面(PDF)

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情報誌『ばろっくざーる』Vol. 48 中面(PDF)

2013年度青山音楽賞 受賞者インタビュー⑥ 吉岡孝悦さん

2013年度青山音楽賞 受賞者インタビューもいよいよ最終回となりました。
第6回目は、「バロックザール賞」を受賞された、打楽器奏者の吉岡孝悦さんです。
吉岡さんは、平成25年3月24日(日)に行われた演奏会での演奏が評価され、「バロックザール賞」を受賞されました。
それでは、贈賞理由とインタビュー内容をご紹介します!

 

吉岡孝悦

 

【贈賞理由】

バロックザール賞

吉岡 孝悦:作曲マリンバ打楽器アンサンブル作品演奏会 京都公演(平成25年3月24日(日))

演奏・作曲・コンサートプロデュースという3つの側面から、吉岡の持つ魅力を余すことなく伝えることに成功した本公演は、演奏に対して「トリック」や「遊び」の要素を取り入れるなど、エンターテイメント性が随所に光るものだった。吉岡作品の特徴として、第一に演奏者とその技術が抜群に映えることが挙げられる。これは、吉岡自身が奏者であり、楽器の扱い方を熟知していることに起因している。また、全曲を通して、聴き手を楽しませることに対する、作曲者の徹底したポリシーを感じる。吉岡のように、演奏家・作曲家としての才能とアイディアを存分に生かし、音楽を総合エンターテイメントとして創造することの出来る音楽家は、現在の日本においては大変稀有な存在であると言えるだろう。また、若手の打楽器奏者たち5人を集め、聴き手・弾き手共に楽しむことの出来る演奏会をプロデュースした、吉岡の企画力も賞賛すべきものである。ここに青山音楽賞「バロックザール賞」を贈り顕彰する。

 

 

【インタビュー】

――最初にこの受賞のニュースを聞かれた時の様子を教えてください。

吉岡孝悦さん(以下、敬称略):最初、青山財団の方からお電話をいただいたんですけど、信じられなかったです。まぁ、僕はすごく特殊なんですね。みなさんは演奏で賞をいただいていらっしゃいますが、僕は自作自演なんです。つまり、自分で作曲したものを自分で演奏して、しかも、僕が作曲した打楽器だけのアンサンブル作品の演奏会を行う、というもの。
そういうことをやっている人はあまりいないので、こういう形での受賞っていうのは、いただいても良いのでしょうか?という感じでした。最初は、嬉しい気持ちよりも、不思議な感じがしました。1年間に開催される演奏会の中で、バロックザール賞をいただけるのは、1組とか2組でしょう。僕みたいな年寄りは取れないだろうとは思ってたんですけど。

 

――受賞対象となったリサイタルには、若手の方と一緒に出演されていたことが印象的でした(注:受賞対象となった演奏会では、5名の若手打楽器奏者と共演)。

吉岡:みんな、桐朋学園の僕の後輩たちです。10、20近く年の離れた人たちですが、お手伝いしていただきました。

 

――そんな若手の方々と一緒にされたコンサートはいかがでしたか?

吉岡:やっぱりね、一緒に演奏したみんなが同じ釜の飯を食ったような(笑)、そんな後輩たちで、すごく僕に協力してくださった。僕はその時、5人全員を東京から連れてきたわけなんですけど、あまりたくさん経費を払うことが出来なかったのです。でも、皆さん「いいですよ、吉岡さん」と言ってくださって、心から協力してくださったのです。本当に感謝しています。こういうアンサンブルの演奏会っていうのは一人で出来ませんから。今回バロックザール賞をいただきましたが、一緒にやってくださった方が協力してくれたからこそ、いただけた賞だと思います。

 

――その方たちはこの受賞を喜んでいらっしゃいましたか?

吉岡:みなさんよかったね、おめでとうって言って下さって。僕みたいな年寄りがこんな賞をもらっちゃって・・・年をとってからこんな賞をもらうなんて嬉しいね、って言ったら、いやいや吉岡さんまだまだお若いですよ!なんてお世辞を言ってもらっちゃいました(笑)

 

――若手の方々をここまで牽引出来る吉岡さんのパワーが凄いと思います。

吉岡:そうですか?僕の作品はただ書いて、楽譜にしているだけではなくて、ちゃんと出版しているし、それだけではなくて自作のCDも作っています。
そいうものが、日本だけでは無くて海外にも輸出されているんです。それに、自分で言うのも何ですが・・・僕の作品は世界中で演奏されているのです。

 

――はい、私も実は吉岡さんの作品をYoutubeで拝見したのですが、海外の方たちが演奏している映像でした。

吉岡:そうなんですよ。それはやっぱり「出版されている」という力が大きいと思うんですけどね。出版されなければ演奏されませんから。
だから、それも僕ひとりの力ではなくて、出版社の力なんだと思います。僕は、そういう縁に恵まれているんです。出版社の人たちに楽譜を見てもらって、大抵は楽譜を見た時点で「ああ、こういう打楽器アンサンブルって特殊だから売れないよ」と突っぱねられてしまうんですけど、中には僕の作品を見て会議にかけてみて、「やっぱり出版することになったから。出版するよ!」っていうことがかなり多かったんです。
僕も良い曲を書こうと、誠心誠意こめて作品を書いていますが、出版社の方も本当に真剣に僕の作品を見てくださって、この作品だったら演奏してもらえるよ!と思ってくださっている。本当にお互いの力が引き合って、こういう演奏会が出来て、作品が広がっていく。それは、みなさんのお力添えでしかありません。本当に幸せです。

 

――吉岡さんの活動内容は少し皆さんと比べて変わっていらっしゃると、一番最初に仰ってくださいましたが、そのような活動をしようと思われたきっかけなどはあるのでしょうか?

吉岡:いま、音楽大学を卒業して、優秀な成績を収めて、コンクールでも受賞して、そんな優秀な音楽家って世界中にたくさん居ますよね。マリンバ奏者もたくさん生まれています。若い人たちは練習する時間もたくさんありますし、テクニックもあります。
だけど、年寄りはテクニックがだんだん衰えてきます。そして、注目度もどんどんなくなってくる。そのときに、同じ注目度を浴びるためには、自分しか出来ないことをやるしかないと思いました。その人しか出来ないことというのは、作曲して演奏するということ。その本人が作曲して、本人が演奏する。それを自作自演と言うのですが、これは、僕しか出来ない。つまり、そういった活動自体が僕の個性になるんです。
音楽界というものは常に「コンペティション」ですから、「負けた!」と思うわけですよ(笑)。でも、自分の曲を自分で演奏すると、負けたと感じることはありません。僕は「負けた」と感じる時、すごく辛いんですね。でも、自分の作品を自分で演奏すると、音楽を表現する上で一番自分がそれを良く分かっているので、負けたというよりも、自分で自分の世界を築いてきたという、そういう満足感というか、「これからも頑張ろう」というバネになる。練習しても若い人には叶わないですから。
そうそう、僕はもうすぐ還暦なんですよ!今月でもう59歳になるんです。来年還暦です。だから、自分が今までやっていきたことを持続していくためには、自作しかないと思ったんです。

 

――そういった、吉岡さん作の作品を、吉岡さんだけではなくて、他の方たちもたくさん演奏なさっていますが、やはり嬉しいものですか?

吉岡:僕が作曲した作品は、もう一人歩きしていますから。僕が生み出した「子ども」と一緒です。その子どもたちが、自立して世の中に出ていくということは、本当に嬉しいことです。

 

――なるほど!今日演奏してくださる《マリンバ連弾のための「変容」》も、吉岡さんの作品ですね。しかも、音楽賞授賞式のために作曲してくださった、できたてほやほやの新曲です。

吉岡:2013年に、一台のマリンバを連弾で演奏するユニット「ウィングス」を結成しました。これは、クラシックのオーケストラ作品を一台のマリンバで演奏出来るように編曲した作品を演奏することをコンセプトとした新しいユニットです。
オーケストラは管弦打楽器で編成され、様々な楽器の音色を聴くことが出来ますが、マリンバだけで演奏すると単一な音色しか聴くことが出来ません。従って、オーケストラ作品の編曲者にはマリンバをどのようにして色彩豊かな作品に仕上げて行くか、ということが求められます。
この《変容》ではその逆の発想で、オリジナルのマリンバ作品を如何にして色彩的な管弦楽のような作品に仕上げるか、ということを課題として作曲しました。作曲している時、私の心の中にはオーケストラが鳴っていました。そのオーケストラのサウンドが様々な色合いに変化して行くことを思いながら作曲しました。

 

――この楽曲も今後、色々な方々が演奏していくのでしょうね。それでは、吉岡さんの作品や演奏を心待ちにしているファンの方にひとことお願いします。

吉岡:こんな年寄りに賞をいただいて、僕は本当にもう感謝しっぱなしです。また、年に負けず、これをバネに、また努力し続けて、良い作品をたくさん書いていきたいと思います。(平成26年3月1日 青山音楽賞授賞式にて)

2013年度青山音楽賞 受賞者インタビュー⑤ 窪田健志さん

2013年度青山音楽賞 「音楽賞」受賞者お二人目、打楽器奏者の窪田健志さんです。
窪田さんは、平成25年12月22日に開催されたパーカッションリサイタル「ルーツへの誘い」での演奏が評価され、「音楽賞」を授与されました。
それでは、贈賞理由とインタビュー内容をどうぞ!!

窪田健志

 

【贈賞理由】

窪田 健志:パーカッションリサイタル「ルーツへの誘い」(平成25年12月22日(日))

音楽は「聴く」ものであると同時に、「見る」ものでもある。窪田のパーカッションリサイタルは、「聴覚的喜び」と共に、昨今の録音再生技術の発展により、我々が忘れかけていたパフォーマンスに対する「視覚的喜び」をも喚起する、非常に充実した内容であった。マリンバ演奏による三善作品や山川作品で見せた、多彩なマレット捌きは実に見事であり、様々な音の表情を感じることが出来た。しかしながら、この日の真骨頂は何と言っても小太鼓とマルチパーカッションによる演奏であった。小太鼓と2本の撥だけで聴衆の心を捉えたフィンク、フルーティストの渡邊玲奈と熱演を繰り広げた野田作品も素晴らしかったが、特に福士則夫の《ソロ・パーカッションの為のグラウンド》で見せた、キレのある技巧と身のこなし、そして集中力は筆舌に尽くし難い。終始、我々の耳と目を魅了した、パフォーマー・窪田健志の演奏は表彰するに値する。ここに青山音楽賞「音楽賞」を贈り顕彰する。

 

【インタビュー】

――受賞のニュースを受け取られた時の感想をお聞かせください。

窪田健志さん(以下、敬称略):窪田:まさか、と思いました。もちろん、受賞出来たら良いなという思いで演奏していましたし、演奏会ではお客さんにとても喜んでもらえたという感触はあったんですけど。僕は大阪出身で、京都にとても縁があったわけでもないので、そういった意味ではどうだろうと思っていましたが、自分が持っている力は全て出せたかなという感触はありましたので、電話が鳴って着信画面を見たときに「うわっ、キタ!!」と、電車の中で嬉しくて飛び上がりそうになりましたね。

 

――それでは、受賞対象となったリサイタルへの手応えというものは感じられていたのですね!

窪田:後半のプログラムで小太鼓を使用した曲があったんですけど、その時にもう一度呼び戻されるほどの拍手をいただいたんですよね。このように、お客さんからたくさんの拍手をいただくことが出来たので、喜んでいただけているのかなという感触はありました。

 

――贈賞理由では、窪田さんが、ただ演奏するだけではなくて、パフォーマンスとして音楽を捉えているという点が挙げられていました。その点についてどう思われていますか?

窪田:実は、パフォーマンスということは結構意識しています。打楽器って、自分のソロだけではなくてアンサンブルでも演奏会をするのですが、やっぱり「見られているな」という意識はこちらもすごくあるし、逆に自分が聴衆として演奏を見ている時に、打楽器は「見る」ということも鑑賞する要素の一つだと感じていたので。例えば、マリンバ演奏の時に譜面台を置かない方が、綺麗に見えるから良いという意見をいただいたこともありますし、演奏会としての見た目や流れを考えた時に、打楽器ってセッティングにすごく時間がかかるんですね。そういうことを考えながら、いかにしてお客さまを飽きさせずに演奏することが出来るか、どういう順番で、どういう配置で演奏すれば楽しんでもらえるかというのは、自分で演奏会をプロデュースする際には気をつけている点です。

 

――私も窪田さんのリサイタルを拝見させていただいたのですが、撥を一つ手に取る動作までもが、パフォーマンスとして捉えることが出来るような、そのような印象を受けました。

窪田:演奏中は「見られている」という意識を常に持っています。例えば、このホールは特にそうなんですけど、本当に些細な小さな音まで拾いますよね。撥と撥がぶつかって、パチッとなった音もお客さんの方にダイレクトに届いてしまいます。そういった意味でも、一挙一動は本当に、とても気をつけています。

 

――今日演奏なさった、フィンクの小太鼓のための楽曲を聴いていても思うのですが、最初から最後まで、リズムやテンポを自分で決めて、演奏しなければいけませんよね。小太鼓だけで一人で演奏し続けるって、何だかとても難しそうに見えます。演奏中はどんなことを考えて演奏なさっていますか?

窪田:どの楽曲を演奏しているときもそうですが、僕が一番念頭に置いていることは、楽曲を忠実に再現するということです。練習するときも、しっかり時間をかけてやります。
あとは、一通り演奏することが出来たあとも、客観視するということは、結構大事にしていますね。例えば、録音してみたり、映像をとってみたり。自分はこうやりたいという思いがあるけれども、他のお客さんがそれを見たときに、どう見えているか、どう聞こえているか、ということについて、最初は全く考えずに演奏していたのです。
でもけっこう、その間にギャップがあったんです。自分はこう思って、こうやってるつもりだったけれど、実際客観的に聴いてみたら、全然足りていなかったということもある。逆に、これはちょっとやりすぎているなということもある。ですから、ちょっと離れて自分の演奏を見たり、聴いたりすることはとても大事だなと思います。

 

――なるほど。窪田さんは現在、ソロ活動はもちろん、名古屋フィルハーモニー交響楽団でも打楽器奏者として活躍なさっていますが、窪田さんにとって、この2つの活動をどのように捉えていますか?

窪田:ソロでやるときって、ある意味、本当に一人ですよね。一人で演奏会の空気を作っていかなければいけない。もちろん、聴きに来てくださるお客さまとそういうものを作るという考え方もあるんですけど、100パーセント自分のタイミングで、演奏会の流れを作っていくことが出来る。逆に、何かうまくいかなくなると、全て自分の責任になってきます。

一方、オーケストラでやっていると、ある時間の流れの中で、そこに皆が100パーセントも持ってこなくてはいけないという、ある意味難しいですけど、合わせるところがあります。でも自分がソロでやっている時は、その流れを自分が作り出さなければいけませんよね。ですから、そういう意味ではソロで演奏する時は、空気をぐっと自分で持っていかなくてはいけません。オーケストラでの経験はそういう時のための勉強になります。あと、オーケストラは色々な楽器があるので、色彩感があります。そういった色彩感をソロでやるときにどうやったら出せるかと考えると、やっぱりオーケストラの中で演奏するということは、ソロをやるときにも必要なことなのかなと思います。

 

――いまは、オーケストラ活動かソロ活動か、どちらに重きを置かれているのですか?

窪田:ちょうど、昨年バロックザールで演奏させていただいた年が、30歳を迎えた年だったんです。30歳を迎えたからには、ソロ活動の方もしっかりしていきたいなと思ったので、3公演(東京・名古屋・京都)させていただきました。そ
して今回、このような賞をいただいたわけですけれども、オーケストラで学んだことをフィードバックしながら、ソロでも生かしていきたいなということは考えながらやっています。

 

――それでは最後に、今後の夢を教えてください。

窪田:今、本当に有り難いことにオーケストラの中に入って演奏出来ていますが、もともと一番の夢はオーケストラの中に入って演奏することだったんです。打楽器の先生方のほとんどは、オーケストラで演奏しながら、リサイタルをされている方がたくさんいらっしゃいますので、そういう活動に自分は強い憧れを持っていました。ですから、今回このようにリサイタルをさせていただいたことは有り難かったですし、しかもそれを評価してくださったということは本当に願ってもいないことでした。今回この賞をいただいたという重みを自分の中で感じながら、おそらく次回は一層ハードルがあがると思うのですが、オーケストラ活動にしてもソロ活動にしても色々なことに挑戦していこうかなと思います。

 

――また、ここバロックザールでリサイタルをしてくださる、と期待してもよいということでしょうか?

窪田:もちろんです!!楽しみにしていてください!!

 

2013年度青山音楽賞 受賞者インタビュー④ 西谷牧人さん

2013年度青山音楽賞 受賞者インタビュー、「新人賞」のお二人を終えたところで、「音楽賞」を受賞なさったお二人を続けてご紹介致します。
ちなみに、「新人賞」はソロリサイタルを開催された25歳以下の方々、「音楽賞」は同じくソロリサイタルを開催された26歳以上35歳以下の方々の中で、「青山音楽賞に挑戦したい!」とエントリーなさってくださった方々を審査対象としています。
詳しくは青山財団HPをご覧くださいね!

まずは、平成25年1月14日に開催された、チェロリサイタルに対して音楽賞を受賞なさった、チェリストの西谷牧人さんです。

西谷牧人

 

 

【贈賞理由】

西谷 牧人:チェロリサイタル(平成25年1月14日(月・祝))

演奏家にとって、「音色の美しさ」は何事にも代え難いものであり、貴重な才能の一つであると言っても過言ではない。古典・ロマン派・近現代と、様々なスタイルによる音楽を披露した西谷は、まるでビロードのような、柔らかくて艶のある音を持つチェリストであり、その魅力的な音色で聴衆の心を一瞬にして捉えた。ハイドンやベートーヴェンでは、端正で伸びやかな音、シューマンでは内に秘めた情熱を感じさせる音が聴かれ、マルティヌーやリヒャルト・シュトラウスではメリハリのきいた音、平野作品では奥行きのある深い音が奏でられた。全曲を通して、洗練された自然な音楽づくりが見られ、一音一音に対して誠実に取り組もうとする姿勢が印象的であった。また、共演者であるピアニスト練木繁夫の熟練したサポートにより、得も言われぬ趣がさらに加えられることとなった。チェロの魅力を伝える演奏家としての一層の活躍を期待し、ここに青山音楽賞「音楽賞」を贈賞する。

 

【インタビュー】

――この度はご受賞おめでとうございます。どのような思いでこの受賞ニュースを聞かれましたか?

西谷牧人さん(以下、敬称略):最初に、ここでやらしていただくときに、まぁ、もし(賞を)いただくことが出来れば良いなという思いがあったので、青山音楽賞にエントリーしたんです。
ところが、僕のバロックザールでのリサイタルは、去年の年明け最初のコンサートだったんです。それから1年以上経って審査結果が出たので、それだけ長い間みなさんに覚えていただけたというか、印象に残る演奏は出来たのかなとは多少思いますし、嬉しかったです。

 

――ここでのリサイタルは初めてでいらっしゃいましたか?

西谷:リサイタル自体は初めてだったんですけど、演奏は2回目。

 

――たくさんこれまで演奏なさってきたと思うのですが、人前で演奏なさる時に、心がけていらっしゃることがあれば教えてください。

西谷:もちろん、演奏は生ものなので、ハプニングがあったりミスがあったりもするのですが、間違えないように弾こうとか、自分のことばかりを考えて舞台に立つようなことはないようにしています。
お客さまが沢山いらっしゃって、同じ空間・同じ空気を共有するので、その時その時の一期一会の出会いが舞台と客席間ではありますよね。
そういうものがあるので、自分が楽譜を読んで、その中で面白いと感じたものを練習して、作り上げて、それが何かしらお客さまに伝えられるように、つまり、演奏を通して自分のメッセージを発信することが出来るようにと常に心がけています。

 

――贈賞理由では、チェロの音色について触れられていましたが、実際に西谷さんはチェロの音色についてはどういう考えをお持ちでしょうか?

西谷:僕は、音色が命だと思っています。何よりも音が命。どれだけ難しい楽曲を演奏することが出来ても、音が良くないと意味がない。まず、チェロという楽器が持つ「一番深くて良い音」というものを、自分の出来る範囲で、自分の技術と僕の楽器で出すということを最優先にしています。ですから、贈賞理由で音色が美しいと言ってくださっているのは、何よりも嬉しいことでした。普段はオーケストラでも演奏していますが、オケ全員で演奏するときでも、音色を第一に考えています。それで、お客さんに「チェロって良い音だね」って思ってもらえるように、そういうことを第一に考えています。良い音じゃないと意味がありませんから。

 

――受賞対象となったリサイタルのプログラムを拝見してみると、色々な時代の楽曲が並んでいます。西谷さんのプログラムにはこだわりなどはありますか?

西谷:めちゃくちゃあるんです!
実は、同じコンサートを東京公演と京都公演という形でやらせていただいたんです。僕は昔、インディアナ大学に留学したんですけど、そこで過ごした時間というのは自分の音楽にとって重要なところでした。今日も来賓でいらっしゃいますが、当時インディアナで教えていただいた堤剛先生と、ヤーノシュ・シュタルケル先生という2人の先生から本当に色々なことを教わったのです。
その時に教わった曲の中で、先生方も好んで演奏していらっしゃった曲、そして、僕があまりまだ皆さんにお披露目していない曲をリサイタルには選んでみました。しかも、先生方の伴奏を普段からなさっていたピアニスト(練木繁夫氏)をお呼びしたのです。
練木先生はアメリカに住んでいらっしゃるので、今日はお越しになられないのですが、練木先生の愛弟子である藤井快哉さんに伴奏をお願いしました。

 

――練木先生は受賞のニュースを聞いていかがでしたか?

西谷:もう、とっても喜んでくださいました!

 

――今日演奏なさるマルティヌーのソナタはどういう思い入れがありますか?

西谷:この曲は、留学先のアメリカ・インディアナ大学で勉強した曲で、僕が師事した先生方も好んで演奏なさっていた曲です。とにかく格好良いなと思って、勉強した曲でした。でもなかなかお披露目する機会がなかった。リサイタルをしようとなったときに、ハイドンとかベートーヴェンとかシューマンとか、そういったものの中に一つ、あのような曲が入ると、とても映えるなと思ったので、マルティヌーのソナタをプログラムに入れました。

 

――本当に、格好良い曲です。

西谷:あ、もう一つ、僕のプログラムにはこだわりがあります。京都にいらっしゃる平野一郎さんという作曲家がいらっしゃるのですが、彼の曲を1曲入れたのです。実は、バロックザールで僕が一番初めに弾いたのが、平野さんのリサイタルだったのです。その作品展で僕が演奏した曲を、僕のリサイタルにも入れました。しかも、あの作品展で平野さんは青山音楽賞を受賞なさったのです!(注:平野一郎氏は2007年に「音楽賞」を受賞)あの時、彼が賞をもらったので、縁起が良い曲だ、と思って(笑)

 

――御縁ですね。

西谷:そう、御縁ですねぇ。その時の曲を僕のリサイタルにも組み込んで、バロックザールでの2回目の演奏でも、こうやって賞をいただきました(笑)

 

――最後になりましたが、今後の夢をお聞かせください。

西谷:もう中堅どころの年齢にきていると思うんです。20代の若手の子たちが最近すごく活躍しているし、自分はそれを見て、あぁ、もう自分は若手ではないのかもしれないな、と思うのです。ぶっちゃけると、去年のリサイタルも応募資格ギリギリだったのです。音楽賞は35歳以下という規程があるんですが、僕のリサイタルの日は36歳になる誕生日のちょうど前日だった(笑)どうせならエントリー出来る間にしたいなという思いと、ピアニストの練木先生とのスケジュールを合わせて考えるとその日程になったのですが、確信犯も良いところですよね(笑)

あと、僕は大学で教えるということもしているのですが、オケでの活動もしているので、ある程度中堅どころと言われるところにいると思います。そういう年齢になったということもあるのかもしれませんが、今後は音楽の幅をどんどん広げていきたいなと思いますね。オーケストラと教職の間にある自分のソロ活動であったり、室内楽であったり、あるいはクラシック音楽以外のジャンルの音楽演奏だったり、そういう多彩な活動にどんどんチャレンジしていきたいなと思います。(平成26年3月1日 青山音楽賞授賞式にて)

 

2013年度青山音楽賞 受賞者インタビュー③ 清永あやさん

2013年度青山音楽賞 受賞者インタビューの第3回目は、ヴァイオリニストの清永あやさんです。清永さんは、平成25年4月14日開催の無伴奏ヴァイオリンリサイタルにおいて、新人賞を受賞されました。
それでは、新人賞の贈賞理由と、今年3月1日に行われたインタビュー内容をご覧ください!

清永あや

 

【贈賞理由】
清永 あや:無伴奏ヴァイオリンリサイタル(平成25年4月14日(日))

無伴奏ヴァイオリン作品のみ、しかもJ.S. バッハ、イザイ、バルトーク、エルンストという難曲揃いの意欲的なプログラムを披露した清永は、見事なまでの集中力と共に全曲を弾き切り、聴衆を大いに魅了した。特筆すべきは、清永の揺るぎない高度な演奏技術、多彩な音色、そして洗練された音楽性である。J. S. バッハでは、正確無比なテクニックと端正な音楽表現を存分に見せ、イザイでは、ヴァイオリン一本で表現したとは思えないほどの豊かな音色で会場を満たした。またバルトークでは、生命力溢れる力強いリズムを聴かせ、エルンストでは、冴え渡る技巧で聴衆を圧倒した。時代もスタイルも異なる4作品を、それぞれに弾き分けた清永の実力は賞賛されるべきものであり、大器としての素質を充分に感じさせる。さらなる飛躍を願いつつ、ここに青山音楽賞「新人賞」として顕彰する。

 

 

――受賞の知らせを聞いた時、どうでしたか?

清永あやさん(以下、敬称略):新年を迎えたあと、ちょうど、神戸から東京に向かう新幹線の中だったんですけど、青山財団さんから携帯電話の方に着信履歴が残っていたんです。それを見て『あ、そろそろ音楽賞の発表の時期だった・・・』と思い出して。ドキドキしました。リサイタルをしたのは去年の4月だったので、ほとんど1年経って、待っている時間が長かったのです。ですから、お知らせをいただいた時はとても嬉しかったです。

 

――受賞対象となったリサイタルですが、ご自分で出来はいかがでしたか?

清永:全曲無伴奏リサイタルをさせていただいたんですけど、こういう形でリサイタルをするのは始めてでした。責任が多いぶん、自由ではあったんですけど、全部一人でするっていうのが、どんなオーケストラとコンチェルトを弾くよりも、ソナタなどの大曲を演奏するよりも、エネルギーが必要なんだなと思いました。やり終えてから、こんなにエネルギーが必要だった一日はないと思いました。

 

――大曲揃いのプログラムでしたからね。なぜ、無伴奏に挑もうと思われたのですか?

清永:もともと無伴奏に惹かれるものがありました。無伴奏ヴァイオリンのための楽曲には、とても不思議な世界感があります。そういう世界に魅せられました。無伴奏を弾く機会はもともと多くて、ある時、相愛大学で師事した小栗(まち絵)先生が「いつか、無伴奏ばかりを集めて演奏会が出来るとあなたにもとても良いんじゃない?」とおっしゃったんです。確か、4年生でした。その時に、やりたい!と前向きな気持ちになりました。それで、今回は無伴奏を選びました。

 

――無伴奏と伴奏付きでは、どういうところに違いを感じますか?

清永:無伴奏を演奏すると、皆さんに「孤独じゃないですか?」と聞かれるのですが、確かに、一人でやるというのは大変なことでした。ただ、やっていて気付いたのは、当たり前のことですが、色々な事柄と自分との間に音楽というのは生まれるのだなということです。例えば、いま、こうやって話していることもそうですし、人や物と関わっていくこと、全ての事柄が自分や音楽を形成していくんだなと思います。本当に当たり前のことなんですけどね。それを自分一人でやるということは、逆にみなさんが自分の中に存在するというか、そういう不思議な感覚が芽生えるのです。大前提のものですが、感謝の気持ちで演奏する。そういうことが一番、根本にありました。ぱっと見ると孤独に見えるし、私もそういうものなのかなと思っていたのですが、逆に孤独さよりも喜びが勝るというか・・・。期待ですとか、喜びですとか、そういうものが自分の中にありました。それをうまく出せるかどうかは私のスキル次第ですが、やっぱりそこにあったものは喜びでした。そういうものでした。

 

――選曲する際、苦労しませんでしたか?

清永:一番弾きたかったのはバルトークだったんです。
バッハのパルティータの3番はオープニングにもふさわしい曲だったのでやりたかったんですけど。でもあまり迷うこともなく、スムーズに選曲することが出来ました。

 

――バルトークのどんなところに惹かれましたか?

清永以前イギリスに留学していて、その頃からお世話になっているパウク先生がハンガリーの方でした。 彼は、バルトークのエキスパートの先生だったのです。
わたしも昔からバルトークの曲が好きだったんですね。それで、小学校4年生くらいのときに、ルーマニア民俗舞曲を弾いて、こんな面白い曲があるのかと、その時に初めて知ったのです。ヴァイオリンに目覚めたきっかけになったというか。
その時、何か強く湧き出るものを感じてから、ずっとバルトークが好きでした。
さっきお話したパウク先生もそうでしたけど、ハンガリー人特有のエネルギッシュなところというか、情熱的なところがバルトークにはあるんですよ。
そういうものを、何年もかけて勉強していきたいと思いました。

 

――清永さんの中でとても大事な作曲家がバルトークだったんですね。

清永:一番弾きたかった曲でした。一番「弾きたい」という思いがあった曲でした。

 

――こういうことを質問するのはナンセンスなのかもしれませんが・・・一人で舞台に立たれると、緊張はしますか?

清永:しますします!!めっちゃします!!(笑)
もちろん、いつも緊張します。緊張感というものは、どの舞台に立ってもあるものです!!

 

――そんなふうに見えないほど、堂々と舞台に立ってらっしゃる清永さんですが、今後に向けて夢などがありましたら、教えてくださいますか?

清永:私は何も詳細を知らないままに「新人賞」にエントリーしたので後から知ったのですが、賞金をいただけるので・・・(笑)いただいた賞金を有効に使えるように、これからちゃんと計画しようと思います! (平成26年3月1日、音楽賞授賞式にて)