2015年度青山音楽賞受賞者インタビュー⑤周防亮介さん(ヴァイオリン・新人賞)

2015年度青山音楽賞受賞者インタビュー第5回は、新人賞を受賞されたヴァイオリニストの周防亮介さんです。
受賞対象となった周防さんのリサイタルは、夏の終わり(8月29日)に開催されたのですが、エルンストの≪夏の名残のバラ≫という曲から始まるという、なんとも粋なプログラムでした。
一つ一つ言葉を選びながら、とても丁寧にインタビューに応じてくださった周防さん。
演奏だけではなく、ファッションもとってもお洒落だったのが印象的で、思わず「素敵なお洋服ですね!」とお伝えしてしまったほど。
そんな周防さんからは、ヴァイオリンを始めたきっかけやプログラムにかけた想いなどをお聞きしました。

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周防亮介 ヴァイオリン・リサイタル(2015年8月29日(土))
わずか20歳にして、驚くべきエンターテイナーである。おそらく周防のリサイタルを聴いた観客全員が、彼から終始目を離せず、その演奏に興奮したことだろう。周防は、並大抵ではない集中力と演奏技巧を備えているが、音楽の駆け引きも巧い。ベテラン・ピアニストの上田晴子にも臆すること無く仕掛ける上に、観客を喜ばせることにも長けている。プロコフィエフの《ヴァイオリン・ソナタ第2番》では、リラックスした音から攻撃的な音まで、幅広い表現力を見せた。プログラム最後のワックスマン《カルメン幻想曲》は特に秀逸。艶のある音色でたっぷりと歌った後に見せた超絶技巧に、審査員一同舌を巻いた。これら見事な演奏は、日々の誠実な努力の賜物だろう。さらなる飛躍を願いつつ、ここに青山音楽賞「新人賞」を顕彰する。(2015年度第25回青山音楽賞授賞式プログラムより)

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――新人賞受賞、おめでとうございます!
周防さんは今20歳ということで、まだまだお若いですが、ヴァイオリン演奏はとても堂々としていて感動しました。いつヴァイオリンを始められたのですか?

 

周防さん(以下敬称略):ヴァイオリンを始めたのは7歳だったんです。きっかけは、母がピアノの教師をしていたこともあって、幼少期から音楽は身近な存在だったんですけど、5歳くらいの時にオーケストラの演奏会につれていってもらうことがありました。
その時に休憩時間に「楽器体験」が出来るようなコーナーがあったんです。そこでヴァイオリンを初めて触らせてもらって、すぐに虜になりました。
それで両親に「習いたい」というふうに伝えたのですが、「ヴァイオリンは難しいから」となかなかやらせてもらえなかったのです。「家にピアノがあるじゃない」ということもあって・・・
でも、2年粘り続けた結果「どうせ難しいから、1ヶ月くらいで音を上げるだろう」ということでヴァイオリンを習わせてもらえたのです。

 

――2年も粘ったって、凄いですねぇ。よほどヴァイオリン演奏が楽しかったんですね。

 

周防:そうですね。でも、7歳でヴァイオリンを始めるということはとても遅いスタートなんです。早い人だったら2歳とかで始めますから。
初めに習った先生にも「プロとしてやっていくにはスタートがちょっと遅いから」というようなことは言われたのですが、自分としてはプロとしてやっていくつもりはなく、ただたんにヴァイオリンが好きだから始めた、という感じでした。
だから初めは、レッスンの時に先生からハナマルをもらうのが嬉しくて、次もハナマルをもらうために続けていたようなものでした。でも小学校4年生くらいから、コンクールを受けるようになったり、先生も厳しい先生に代わったりして、生活自体がヴァイオリン一筋になっていきました。
自然な形で「ヴァイオリン一本でやっていこう」と思えましたね。

 

――そうでしたか。練習は嫌いではなかったですか?

 

周防:それが、全く苦痛とかではなかったのです。小さい頃は、20分練習したら5分休憩して、ということを何回も重ねてやっていました。これは母親のアイディアなんですけど。
20分って、弾いているとあっという間なんです。だから本当に楽しく練習していました。

 

――今はどれくらい練習なさっていますか?

 

周防:今は・・・そうですね。うーん、学校がある日とない日とでは全然違うんですけど、だいたい平均して6,7時間やっていますね。

 

――おお~、起きている時間の半分くらいはヴァイオリンを弾いていらっしゃるのですね。すごいなぁ。
ところで2015年には出光音楽賞も受賞なさっていますよね。そして、同年に青山音楽賞の新人賞も受賞されました。2015年は周防さんにとって、どんな一年になりましたか?

 

周防:憧れだった2つの賞を頂けるなんて本当に思ってもいなかったので、受賞出来ると知った時は『本当かなぁ~』と思いました。1年間でこんなに大きな賞を2つも頂いてしまったから、一生分の運を使い果たしてしまったのではないか、と心配になりました(笑)

 

――そうなんですか!わたしも周防さんのリサイタルを聴かせて頂きましたが、バロックザールに来てくださって本当に嬉しかったですよ。しかもチケットは完売でしたね。

 

周防:あの日はお客さんももちろんですけど、ホールのみなさんもとても温かく迎えてくださったので、気持ち良く演奏することが出来ました。

 

――本当に素敵な演奏でした。あのプログラムはどういうコンセプトで組まれましたか?

 

周防:今回は上田晴子先生にピアノ伴奏をお願いしたので、上田先生と一緒にプログラムを考えました

 

――上田晴子先生とはどのようなご縁なのですか?

 

周防:初めてお会いしたのは中学1年の時だったのですが、いま師事している小栗まち絵先生のお宅にジャン=ジャック・カントロフ先生(Jean-Jacques Kantorow、62年パガニーニ国際コンクール覇者)がいらして、通訳として上田晴子先生もいらっしゃったのです。
その時に声をかけてくださって以来、本当によくして頂いています。

実は、リサイタルという形で上田先生と共演させて頂くのは今回が初めてだったのですが、地元京都で演奏する時に「上田先生とぜひ共演したい」と思って、実現しました。

エルンストは「夏の名残のバラ」というタイトルもあって、ちょうどこの8月29日も夏がだんだん終わっていくという時期だったので、タイトルとかけてみました。
あと、エルンストは個人的にすごく大好きな曲で、弾いていてすごく気持ちがいいのです。だから1曲目にしました。
2曲目と4曲目のドビュッシーとプロコフィエフのソナタは、これまであまり勉強してこなかった近代の曲です。これまで古典派とかロマン派とかばかり弾いてきたので、上田先生とお話していた時に「せっかくリサイタルをやるんだから、新しい曲もやってみよう」という流れになりましたし、自分自身も先生から新しいことを教わりたいと思って選びました。

 

――それにしても、大曲揃いでしたね。

 

周防:プログラムを組んだ時は「やりたい」と思って選ぶんですが、あとになって「こんな曲しなきゃよかった~」と思うことはありますね。

 

――準備は大変でしたか?

 

周防:そうですね。でも、上田先生と練習を重ねて、多くのことを学ぶことが出来た貴重な時間でした。

 

――特に印象に残っている曲はありますか?

 

周防:そうですね・・・うーん、プロコフィエフかな?それまでプロコフィエフってあまりやってこなかったのです。だから初めはあまりしっくりこなかったのですが、色々プロコフィエフについてお話を聞いたり本を読んだり、色々勉強をしたら、抑圧された背景の中にもちょっと憧れだったとかチャーミングなところとか面白いリズムだとか、そういうところが見えてくるようになりました。
上田先生が今まで色んな方と共演されてきた中で分かったことを、色々と教えてくださったということもあってすごく楽しかったなと思います。

 

――リサイタルが終わったあとの手応えってどうでしたか?

 

周防:「新人賞をもらえれば嬉しいなぁ」という気持ちはありましたけど、それ以上に関西でリサイタルをするということに喜びを感じていました。
これまで、あまり関西で演奏する機会を得ることが出来なかったので、地元京都で関西の方に自分の演奏を聴いてもらいたいという気持ちが強かったです。
だから、充実感を凄く感じましたし、リサイタルを開催して良かった、という気持ちでいっぱいになりました。

 

――ところで、将来的に留学を考えていらっしゃるとか。

 

周防:そうなんです。でもまだ「この国がいい」とかはなくて、漠然と、ヨーロッパで音楽の勉強が出来たら良いなぁとは思います。

 

――きっと留学から帰ってこられたら、もっと成長されているのでしょうね。楽しみです。
それでは、最後に将来の夢を教えてください。

 

周防:まだ20歳でこれから何十年もヴァイオリンを弾き続けていくと思うんですけど、これからもっと広い世界に出て色々なことやものを見聞きして経験を重ねて、色々吸収して、人としても音楽家としても、さらに大きく成長出来るようになれたら良いなと思います。

(2016年3月5日青山音楽記念館・バロックザール)