2014年度青山音楽賞 受賞者インタビュー⑥ クァルテット・ベルリン・トウキョウ(弦楽四重奏、バロックザール賞)

2014年度青山音楽賞受賞者インタビューも残すところ、2回となりました。
第6回目の今日は、バロックザール賞を受賞された弦楽四重奏団クァルテット・ベルリン・トウキョウです。
4人全員がドイツのベルリンに留学していたという縁で結成した、このカルテット。
仲の良さと同時に、音楽に対する意識の高さが印象的でした。

クァルテット・ベルリン・トウキョウ(左から守屋剛さん、モティ・パヴロフさん、松本瑠衣子さん、杉田恵理さん)075

 

――今回の受賞、おめでとうございました。まず、皆さん方4人がどのようにしてこのカルテットを組まれたのか、お話いただけますか?

杉田恵理さん(以下敬称略):まず、守屋君と私が武生国際音楽祭でカルテットとして出て欲しいとお願いされたんです。守屋君とは一緒に弾いたことがあったのは一回だけで、特別に親しかったわけではなかったのですが。それで、守屋君はファーストをやることになって、私がヴィオラをやることになりました。でも、セカンド・ヴァイオリンとチェロがいない、ということでその他のメンバーを探すことになりました。

松本瑠衣子さん(以下敬称略):杉田さんと私は3,4年前から別のカルテットで演奏していたので友人でした。他のメンバーとは一緒に演奏したことがなかったのですが、皆ベルリンに住んでいたので、それぞれが知り合いという関係だったのです。

――なるほど、この4人が一緒に演奏活動を始めるには「ベルリン」というご縁があったんですね。活動を始められて何年になるのですか?

杉田:2011年に結成したので、今年で4年目になります。

――3年目の年にここで演奏会をしてくださったわけですが、ここで演奏会をしようと思われたきっかけは?

杉田:私がホールの申込みをしました。以前から関西で弾きたいなという気持ちがあったのですが、出来れば金銭的に助成していただけるようなところがいいなと思ってホールを探していたんです。そこで見つけたのが青山音楽記念館・バロックザールで、申込みに行った時に「賞に参加されますか?」と聞かれたので、「はい!」っていう感じで賞への参加を決めちゃいました(笑)
守屋君は前に「新人賞」をもらったんですよね。
守屋剛さん(以下敬称略):2005年かな?

――当日のプログラムはどうやって組まれたましたか?

守屋:今、レパートリーを広げていこうとしている最中で、それぞれの時代から偏らずにプログラミングしようと思っていました。演奏会ではベートーヴェンの5番とブラームスの2番が前半で、後半は死と乙女(シューベルト)を演奏しました。私の師匠である田渕洋子先生らがいつもアルバン・ベルク弦楽四重奏団が演奏したシューベルトの「死と乙女」の話をされていたので、絶対にそれは弾こうと決めていました。ベートーヴェンは難しいですけど「チャレンジ」として、ブラームスはロマン派時代の楽曲として、それぞれプログラムに組む込むことにしたのです。

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――なるほど、そうだったんですね。ところで、この4人の方々の中でどなたが率先して音楽を引っ張っていくのですか?リーダー的存在の方っていらっしゃいますか?

杉田:皆、わりとリーダー的ですよね。誰が仕切って・・・とかはないですね。わりと民主的なカルテットだと思います。喧嘩もいっぱいするんですけど。皆がそれぞれに得意分野がありますね。

――バランスがいいんですね。ちなみに皆さんの得意分野は何ですか?

杉田:私は連絡係ですね。マネージャー的なことが結構得意です。コンクール情報とかを収集したり。守屋君は何だろう・・・

松本:コネクション係かな?(笑)彼は結構周りの人々に恵まれていて・・・(笑)

杉田:先生とかを探してきてくれたりしますね。守屋君のおかげで今、ハノーファー音大でオリヴァー(・ヴィレ)先生に師事することが出来ています。で、モティ(・パヴロフ)は・・・

パブロフ:・・・コメディ?(一同笑い)

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――いや、コメディ的要素は大事ですよね。

杉田:日本人3人だけだと雰囲気が固くなったりすることもあるんですけど、彼がいることによって言いたい放題になったり、英語でストレートに言えたりするんです。フレキシブルな感じになります。
松本さんは・・・彼女はやっぱりみんなのお母さん的存在です(一同笑い)

松本:私たちはよく演奏旅行をするんですね。とても恵まれたことなんですが、ホテルではなく友人たちの家に宿泊させてもらうことが多いんです。練習やリハ中にはあんまり怒ることはないんですけど、誰かのお宅にお邪魔することになった時にいきなり「汚い!ちゃんと掃除して!」と怒ったりします(笑)

パヴロフ:ミンナノ オカーサン(一同笑い)

――さっき喧嘩をよくなさると言っていましたが、それは音楽的な内容で、ですか?

杉田:そうですね。やっぱり突き詰めていくと色々と譲れないことが起こってくるのです。それで「なんでそう思うんだよ」ということに発展していくんです。だんだん喧嘩になっちゃうというか。

――でも、それってすぐに解消するんでしょう?

杉田:私はすぐに忘れます。でもパヴロフはけっこう後々残っちゃう。センシティヴなんです。

松本:コメディ担当なんだけど実は繊細なんです。

――なるほど。皆さんの仲の良さが伝わってきます。
最後になりますが、今後の活動とか、目標がありましたら教えていただけますか?

杉田:今回、二度目の日本ツアーをさせていただいたんです。受賞対象公演となった演奏会は一度目の日本ツアーの中の一つでした。今回は東京や横浜、岡山に福岡、最後に浜松で演奏会を開催して終わるんですが、色々な方と知り合うことが出来ました。ドイツでは2月にマネジメント事務所がつくことになりました。これからはドイツだけではなくヨーロッパ中で、今まで以上に演奏活動をすることが出来るのではないかと思っています。次の年、また次の年っていうようにつなげていけたらいいなと思っています。今回の日本ツアーをやってみて手応えを感じているので、これからも頑張っていきたいです。

――京都でもまたやっていただけますよね?

松本:したいです!でもなかなか難しいです。関西を全く知らない私たちにとっては京都で演奏会をするということはなかなかハードルが高いです。もっと私たちを知ってもらいたいと思っていますし、知ってもらった上で、もっと色々な土地で演奏会をしていきたいと思っています。

守屋:私は、これまで自分たちの演奏を聴いたことのない人たちのために弾いていきたいです。コンサートに足を運べないようなおじいちゃんやおばあちゃんのもとでも演奏したいです。カルテットというのは、ピアノがなくても演奏出来ますし、オーケストラよりも機動力がありますし、色んなところにいける。レパートリーにも恵まれています。ソロよりも音楽的な幅は広いと思っていますので、色々なところでカルテットの良さというものを伝えていきたいです。音楽によって色んな人とコミュニケーションを取れたら良いなと思います。

私個人としては、カルテットを通して魂を磨いていくことが出来るのではないかと思っていて・・・それは、ものすごく難しいことだと思うんですけど、4人それぞれの価値観とか考え方が違う中で、どうやってそれを乗り越えていくか、高めていけるかということは、結局自分たちの音楽を磨いていくことにつながっていくと思うんです。心が綺麗であれば、音楽も綺麗になると思うんです。お互いにぶつかることを恐れずに、同時に、他の人のために何が出来るのかということを常に考えていかなければいけない。今すごく貴重な機会を頂いていると思っています。
私たちの師匠が言った言葉なんですが、「何が本物か分からなくなってくる」「曖昧になってくる」中で、このカルテットは本物を突き詰めていく貴重な存在です。恵まれたメンバーと一緒に妥協の無い音楽を目指していける環境の中で、これからも良い演奏活動が出来るのではないかと思っています。

パヴロフ:聞いてくださったお客さまの記憶にいつまでも留まるような演奏をしていきたいと思っています。音楽は花と一緒で、その一瞬が大事です。その瞬間を大事にして、人の心に残るようなカルテットにしていきたいです。

 

(平成27年3月7日 青山音楽記念館・バロックザール)