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    プログラムノートを公開しました(6/27(土) ATÉA QUINTET アテア・クインテット~橋本杏奈&フレンズ)

    2026.06.05

    刺激的な木管五重奏の世界への扉を開くきっかけに…とのコンセプトで構成された今回のプログラム。
    木管アンサンブルの長い歴史の魅力がたっぷり盛り込まれた意欲的な内容をさらにお楽しみいただくため、アテア・クインテットのメンバーと作曲者が自ら書き下ろしたプログラムノートを、演奏会に先駆けて特別に公開いたします!

     

    〈PROGRAM NOTE〉

    グスターヴ・ホルスト: 木管五重奏曲 変イ長調 op.14 
    解説:アシュリー・マイヤル(ファゴット)

     グスターヴ・ホルストは1874年、グロスターシャー州チェルトナムに生まれ、王立音楽大学(RCM)を卒業後、プロのトロンボーン奏者として活動しました。彼の作曲スタイルは、ワーグナーの後期ロマン派の語法、ヒンドゥー哲学やサンスクリット文学への深い傾倒、そしてイギリス民謡への変わらぬ関心など、多岐にわたる影響を受けて形成されており、こうした音楽的背景の多くは、彼の親友であったヴォーン・ウィリアムズ(1872-1958)とも共通するものでした。
     ホルストが『木管五重奏曲』を完成させたのは1903年のことで、彼の代表作である管弦楽組曲『惑星』が誕生する10年以上前のことです。同年、ホルストはこの楽譜をフルート奏者のアルバート・フランセラに送りましたが、作品が演奏されることはなく、その後長年にわたり行方が分からなくなっていました。しかし、1952年に個人コレクションの中から草稿スコアが再発見され、さらに1978年にはサリー記録保存所にあったルーシー・ブロードウッドの遺品の中から自筆譜が見つかりました。こうして、作曲から実に80年近く経った1982年9月15日、ロンドンのウィグモア・ホールにて、ナッシュ・アンサンブルの手によってようやく初演を迎えました。
     本日演奏する現代版(実用譜)は、ホルストの娘であるイモージェン・ホルストと、コリン・マシューズの二人の作曲家により改訂されたものです。作品の意図に添うよう細心の注意が払われ、第1楽章と第2楽章には実質的なカット(省略)がいくつか施されていますが、第3楽章と第4楽章は、ほぼホルストが書き残したままの姿で提示されています。

     

    ジャン・フランセ:木管四重奏曲
    解説:アンナ・ハシモト(クラリネット)

     ジャン・フランセは、優れたピアニストであると同時に卓越した作曲家でもあり、あらゆる楽器のために数多くの作品を残しました。もし彼がいなかったら、私たちの木管楽器のレパートリーは激減し、今ほど楽しいものではなくなっていたかもしれません! かつてモーリス・ラヴェルは、フランセの両親に向けてこう語ったと言われています。
    「この子の才能の中でも、私がとりわけ注目するのは、芸術家にとって最も実り豊かな『好奇心』という才能です。この貴重な才能を、今も、そしてこれからも決して摘み取ってはなりません。さもなければ、この若い感受性が枯れてしまう危険性があります」
     フランセが、ル・マン音楽院の教授陣のために四重奏曲を書きあげたのは、わずか22歳の時でした。すべての奏者にヴィルトゥオーソ(超絶技巧)を要求するとともに、彼の若々しい好奇心と喜びが、華やかなフレーズとなって音楽から溢れ出します。
     演奏するものにとっても、聴き手にとっても純粋に楽しいこの作品。ホールを後にする皆さまの誰もが、笑顔に包まれるような演奏になれば幸いです!

     

    マイク・マウアー :『ジャズ組曲』より 〈ディキシーランド〉 、〈ボサノヴァ〉
    解説:マイク・マウアー(作曲家)

     木管五重奏のための『ジャズ組曲』は、2013年にフルート奏者で管楽器スペシャリストのジョナサン・マイヤルから、アテア・クインテットによる演奏のためにと委嘱を受けて作曲したものです。木管五重奏を構成する楽器のうち3つ(オーボエ、ホルン、ファゴット)は、ジャズというジャンルにおいては比較的「縁遠い」存在ですが、このアンサンブルが持つ豊かなダイナミックレンジと一体感のあるサウンドは、ジャズ特有の、時にメロウで、時に骨太で、常にグルーヴ感あふれる響きを表現するのに完璧に適しています。オーボエやホルン、ファゴットが、本格的なグルーヴや13th(サーティーンス/洗練・メロウ)、#11th(シャープ・イレブンス/浮遊感・ミステリアス)といったテンションコードに果敢に飛び込んでいく様子は、演奏する側にとっても聴く側にとっても、エキサイティングで少し新鮮に感じられることでしょう。
     ただし、本物のジャズの慣例とは異なり、この作品には即興演奏(アドリブ)は一切含まれていません。その代わり、すべての楽章において、それぞれの楽器に見せ場(ソロ)がしっかりと用意されています! 私がこれらの曲を書いていた時と同じくらい、皆さまにも楽しんで聴いてくださることを願っています。

    〈ディキシーランド / Dixieland〉
     思わず足でリズムを刻みたくなるような、活気あふれる「ディキシーランド・ジャズ」は、20世紀初頭にニューオーリンズで生まれ、第一次世界大戦のころにシカゴへと広がっていきました。いわゆる「トラディショナル・ジャズ(伝統的なジャズ)」の代表格であり、主にブルースから音楽的な影響を受けつつ、当時人気だったマーチングバンドの楽器編成(クラリネット、トロンボーン、トランペットが中心)も取り入れています。
     このスタイルを広めた最も有名なバンドといえば、おそらく「キング・オリヴァーズ・クレオール・ジャズ・バンド(King Oliver’s Creole Jazz Band)」でしょう。若き日のルイ・アームストロングがここで腕を磨き、そのトランペット演奏で世界的な注目を集めるようになりました。
     この楽章では、ディキシーランド特有のにぎやかなエネルギーと、バンジョーが刻むシュッシュッという軽快なリズムフィール(グルーヴ感)を再現しており、ソロの見せ場もたっぷりと用意されています!

    〈ボサノヴァ / Bossa Nova〉
     この楽章では、ボサノヴァ特有のシャッフルするような、シンコペーションの効いたラテン・フィールを表現しています。ブラジルのポピュラー音楽の形式であるボサノヴァは、もともとサンバから派生したものですが、アントニオ・カルロス・ジョビン(20世紀のブラジル音楽を代表する作曲家)によって、より内省的なスタイルへと形を変えました。
     ちなみにジョビンは、西洋クラシック音楽の語法の中にブラジルの旋律やリズムを日常的に取り入れた、同郷の作曲家エイトル・ヴィラ=ロボスからも部分的にインスピレーションを受けています。

     

    オット・モーテンセン :木管五重奏曲
    解説:トーマス・ハンコックス(フルート)

    ©Raphaël Neal

     オット・モーテンセンは1907年にコペンハーゲンで生まれ、その音楽人生の大半をデンマークで過ごしました。自身が学び、のちに20年以上にわたって教鞭を執ることになるコペンハーゲン音楽院で教育を受けたほか、ベルリンやパリにも留学し、ダリウス・ミヨーに師事しました。そして王立劇場で約20年間にわたりオペラのレペティトゥール(歌劇場の練習ピアニスト・指導者)を務めた後、オーフス大学で教鞭をとりました。

     彼の作品は声楽曲を中心としており、作品数は決して多くはありませんが歌曲の作曲家として記憶されています。また、稀に見る強い信念を持って、デンマークの芸術歌曲の伝統(ロマンセ)を20世紀半ばへと継承しました。その数少ない器楽作品の中で特に際立っているのが、1944年に作曲された『木管五重奏曲』です。ある批評家は「伝統的な基礎の上にある、バランスの取れた形式が顕著である」と評した通りの名作です。

     

    アントン・ライヒャ: アンダンテ・アリオーソとアダージョ
    解説:フィリップ・ハワース(オーボエ)

     歴史上で最も多作な木管五重奏曲の作曲家の一人であるアントン・ライヒャは、生涯に24曲の木管五重奏曲を書き残しました。その中でもこの作品が異彩を放っているのは、オーボエの代わりにイングリッシュ・ホルンが使用されている点であり、これによってアンサンブルに、より陰影のある牧歌的な響きがもたらされています。ライヒャが木管室内楽に抱いた情熱は、自身がフルート奏者であったことに影響されているのは間違いなく、それがしばしば、叙情的で美しい旋律に満ちた室内楽作品を書くインスピレーションとなりました。イングリッシュ・ホルンが加わることで、その表現力はさらに高まり、アンサンブルの響きに温かみと深みを与えています。
     ライヒャはそのキャリアの大半をパリで過ごし、パリ音楽院の作曲科教授を務めました。門下生には、エクトル・ベルリオーズ、セザール・フランク、シャルル・グノー、そしてフランツ・リストらが名を連ねています。本日演奏するこの作品は、ライヒャの他の作品に比べると演奏される機会こそ少ないものの、彼を木管五重奏において最も影響力のある作曲家たらしめた、その独創性を鮮やかに示しています。

     

     

    ヴァレリー・コールマン :ツィガーヌ
    解説:クリス・ビーグルズ(ホルン)

     ヴァレリー・コールマン(1970~)は、アメリカのフルート奏者、作曲家であり、ここ数十年のアメリカを代表する室内楽アンサンブルの一つ「イマニ・ウィンズ」の創設者です。彼女の音楽は、ジャズ、西アフリカのリズムパターン、そしてアメリカ的な物語性の感性を取り入れており、抽象的な形式の設計よりも、演奏者の存在を念頭に置いて形作られることが特徴です。
     木管五重奏のための『ツィガーヌ』は、ラヴェルの『ツィガーヌ(演奏会用狂詩曲)』を新たな音色で再構築した作品であり、そのロマ風の情熱的なスタイルを、フルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットの色彩へと昇華しています。推進力のあるリズム、滑り込むようなメロディライン、そして炸裂する輝かしい技巧は、あらかじめ書かれた楽曲というだけでなく、即興演奏をも連想させます。コールマンは木管楽器が持つ「きらめき」と「鋭さ」の可能性を最大限に引き出し、緻密に構成されていながらも、瑞々しい自発性に溢れた作品を作り上げました。ダンスのような熱量とシアトリカル(演劇的)な才能の渦へと聴き手を誘います。

     

     

                                                                  

    2026年6月27日(土)17:00開演 青山音楽記念館 バロックザール
    「ATÉA QUINTET アテア・クインテット~橋本杏奈&フレンズ」
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    英国きっての精鋭アンサンブルが聴かせる意欲的なプログラムをぜひお楽しみに!