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特別インタビュー掲載(11/25公演:葵トリオ-チェコ・ノスタルジア-)

2023.08.24

 

2018年のミュンヘン国際⾳楽コンクール優勝から、瞬く間に世界的アンサンブルとなり、 今や各国から演奏依頼の絶えない葵トリオのみなさんにお話を伺いました。 

 

■バロックザールゆかりのアーティストでもある葵トリオさん。2018年にバロックザールで開催された演奏会で、⻘⼭⾳楽賞<バロックザール賞>を受賞されました。当時のエピソードをお聞かせいただけますか︖ 

実は私たち葵トリオを結成するきっかけの一つとなったのは、3人とも関西出身なので関西で演奏会をしてみたい、という思いからでした。バロックザールは言わずと知られた室内楽にふさわしいホールですし、若い音楽家に向けた公演助成もありますので、関西初のリサイタルはバロックザールでしよう、となったことも自然な流れでした。

2018年《第28回》青山音楽賞授賞式より

2018年3月のリサイタルでは、当初とにかく弾きたい曲を弾こうとプログラムを組んでいました。確かブラームスの3番、ショスタコーヴィチの2番、ベートーヴェンの大公でした。すごいヘビーですよね(笑)。その後ミュンヘンコンクールを受けることになり、予備審査用の録音も同じ3月に録らなければならないということで、リサイタルでもその事前審査の曲を弾こうとなった結果、2時間半もの長大なコンサートになってしまい、我々もヘトヘト、きっと聴いて下さったお客様もヘトヘトになってしまったかもしれません。しかしこの関西初リサイタルによって光栄にもバロックザール賞を頂くことができ、その後も私たちにとって思い出深いこのホールで演奏し続けることができていることは、この上ない喜びです。

 

■ピアノ三重奏の魅⼒を教えてください。 

まずは、様々なジャンルの音楽が好きな方に親しみを持って頂けるところではないかと思います。ピアノファン、弦楽器ファン、そしてもちろんオーケストラファンの皆様もです。それぞれの楽器単体の魅力も存分に楽しむことができますし、3つの楽器が合わさって生まれるエネルギーは、オーケストラを思わせるようなうねりや圧倒感があります。

また、レパートリーの広さも特筆すべき点だと思います。いわゆるピアノ三重奏のコンサートといえばメンデルスゾーンやチャイコフスキーなどのお決まりの名曲が演奏される事が多いですが、実は古典から現代に至るまで数々の名作曲家が作品を残しています。ショパンやリスト、フランク、ショーソンも素晴らしい作品を書いているのです。ここまでレパートリーが充実している室内楽は、弦楽四重奏とピアノ三重奏ぐらいではないでしょうか。我々はベートーヴェンやシューベルトといった偉大な作品もライフワークにしつつ、積極的にレパートリーを開拓して皆さんとその素晴らしさを共有したいと思っています。そしてピアノ三重奏により親しみを持って頂けたらとても嬉しいです。

 

■今回のプログラムはすべてチェコの作曲家による作品ですが、選曲の背景や聴きどころを教えてください。 

©Kosuke Atsumi

私たちにとって、1つの国に絞ったプログラムを組むのは今回が初めてです。各作曲家の特徴や音色を追求して、リハーサルを重ねていきたいです。スメタナは、今回初めて取り組む作品です。この曲は、スメタナが幼い娘を立て続けに2人も亡くした時期に作曲されており、曲全体が悲嘆と愛に満ちています。終楽章には葬送行進曲のような部分も出てきます。ピアノ三重奏の名曲の1つです。マルティヌーは各楽章がコンパクトで、丁々発止のやり取りや、美しい夜の音楽、少し不気味なダンスなど、様々なキャラクターをお楽しみいただけます。ドヴォルザークの第3番は、ピアノ三重奏のレパートリーの中でも長大なものの一つ。ドヴォルザークのピアノ三重奏曲といえば第4番の「ドュムキー」が有名ですが、今回演奏する3番は曲の構成や室内楽的に完成度が高く、大変素晴らしい作品です。オーケストラのような迫力あるサウンドや、ドヴォルザークならではの美しい旋律、チェコの風を感じていただけると思います。

 

■(2021年秋に訪れられた)チェコの街はいかがでしたか? 旅での三⼈の楽しいエピソードがあればお聞かせください。 

©Kosuke Atsumi

チェコは、コリーン、リトミシュル、プラハの3都市で演奏させていただきました。どの街も中世ヨーロッパの建築物や雰囲気が色濃く残る、大変美しい町で、お伽話の世界に迷い込んだようでした。コリーンの演奏会では、1時間プログラムだと思っていたら当日に2時間プログラムと判明したりと、ハプニングもありましたが、それもとても良い思い出です。リトミシュルは、今回演奏するスメタナの出身地。普段入ることができない、大変歴史あるバロック劇場で演奏させていただきました。舞台装置も含め全て木で造られており、とても美しい響きの劇場でした。プラハでは、観光とチェコ料理を全力で堪能!!チェコビールに、お肉料理、ジェラートなど、毎日食べて飲みまくって、最終日にはすっかり体が重くなっていました(笑)。プラハのお肉レストランは、本当に美味しくて期間中に再訪。その後も、ベルリンから何度か通ったメンバーもおります。日本にも出店して欲しいです。

 

■葵トリオの今後の⽬標をお聞かせください。 

ソリストが3人集まって演奏するというイメージが持たれやすいピアノ三重奏の形態の特性上、日本には常設のピアノ三重奏団はそこまで多く無いかもしれません。また、ピアノ三重奏の演奏会は多いかもしれませんが、そこで演奏される曲は限られてしまっているようでもあります。しかし実はピアノ三重奏曲は、弦楽四重奏曲にも負けず劣らず古典から近現代まで幅広いレパートリーを誇っています。その中には知名度こそ高くはないものの、隠れた名曲がたくさんあります。葵トリオは常設団体のメリットである、リハーサル時間を潤沢に取れることや、緻密なアンサンブル力を生かして普段日の目を見ることの少ない曲を開拓し、その素晴らしさを皆様にお届けすることをライフワークにしていきたいです。

葵トリオは2016年に結成し、今年で結成8年目になり、2026年には結成10周年を迎えます。その年には何か記念になるイベントを自分たちの発信で企画したいと考えています。具体的には葵フェスティバルのような室内楽の音楽祭を開き、今までに出会った素敵な音楽家の方々たちとの共演や、マスタークラスなども構想しています。

また今年は7月末から8月にかけて大阪の住友生命いずみホールや沖縄で、若いプロを目指す音大生の方々へのマスタークラスも開催しました。まだ30代が始まったばかりの私たちですが、後進の指導も今後の活動の中での大事な要素として考えています。

 

■ご来場の皆様にメッセージをお願いします。

©Kosuke Atsumi

葵トリオは全員が関西出身で、関西で演奏会がしたいという強い想いのもと結成しました。そして結成から約2年経った2018年の3月にバロックザールで自主公演を行い、それが葵トリオとしての念願の関西での初公演となりました。バロックザールはとても響きがよくピアノ三重奏との相性の良さを感じながら、たくさんのお客様の前で演奏したことは今でも鮮明に記憶に残っています。大変光栄なことにその時の演奏を評価していただき、青山音楽賞バロックザール賞を受賞しました。授賞式と受賞記念演奏会を含めるとバロックザールでの演奏会は今回で4回目となりますが、出身の関西の地で私たちの演奏を地元の方々に聴いていただきたい想いは今も変わりません。私たちのこれからの成長も末長く見守ってください。

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2023年11月25日(土)「葵トリオ-チェコ・ノスタルジア-」公演情報・チケット購入情報は⇒こちら