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    特別インタビュー掲載(9/23公演:カルテット風雅 リサイタル)

    2026.07.25

    今年3月の青山音楽賞受賞に続き、5月には大阪国際室内楽コンクール第2位という嬉しいニュースを届けてくれたカルテット風雅のみなさん。
    今確かな注目を集める4人が、バロックザールで再びリサイタルを開催します!
    さらに進化した「今」の響きとは──。
    公演を前に等身大の想いをたっぷりと伺いました。

    左から小西健太郎(ヴァイオリン)、松谷壮一郎(チェロ)、落合真子(ヴァイオリン)、川邉宗一郎(ヴィオラ)

     

     

    カルテット風雅(弦楽四重奏)特別インタビュー


    – 世界中の精鋭が集まる大阪国際室内楽コンクールでの受賞、誠におめでとうございます。大きな舞台を経験されて、新しい発見や変化はありましたか?

    落合 ありがとうございます。私たちにとって初めての国際コンクールで、1週間にわたって4つのラウンドを演奏するという、本当に濃密な経験でした。期間中はずっと気持ちを張り続けていたので、ファイナルが終わった瞬間はようやく深呼吸ができたような感覚で、体力も集中力もすべて使い切っていました。「もう何も考えられない……。あ、今日は何も考えないで眠れる…」そんな気持ちだったのを覚えています(笑)。
    コンクール前は、それまで気にならなかったような細かな音楽的なズレや音程、アンサンブルの精度まで強く意識するようになり、普段以上に集中してリハーサルに取り組みました。 この経験を経て感じている変化は、音楽面、自己管理、そしてメンバーとの関わり方でしょうか。 音楽面では、国際的な舞台を経験したことで、自分たちの現在地を知ると同時に、これから目指していきたい音楽の方向性もより明確になったように感じています。 また、常に緊張状態のなかで1週間を過ごしたことで、自分たちらしい音楽を安定して届けるためには、心身のコンディションを整えることも演奏の一部なのだと実感しました。睡眠や食事、休息の取り方はもちろん、自分自身の気持ちと向き合い、自分のご機嫌を取ることも大切な準備の一つということを学んだように思います。さらに、4人での過ごし方についても変化を感じています。私たちは普段から仲が良いですが、いつも一緒にいるのではなく、それぞれが一人で曲と向き合う時間や、自分自身を整える時間も意識的につくるようにしています。お互いを信頼しているからこそ、適度な距離感を保ちながら過ごすことの大切さを実感した1週間でもありました。

     

    – 多くの課題曲にはどのように取り組まれましたか?

    落合 7曲もの弦楽四重奏曲に同時に取り組んだのも、今回が初めての経験でした。演奏時間を合計すると約3時間半にもなります。限られた時間のなかで、どの曲にどれだけ時間をかけるのか、どのようにリハーサルを進めるのかについても、メンバーで話し合いながら準備を進めました。特に印象に残っている課題は、第12回大阪国際室内楽コンクール委嘱作品、酒井健治さんの《弦楽四重奏曲第2番「フローティング・パーティクル」》です。初めて楽譜を見た時には、「これが本当に一つの音楽になるのだろうか」と、メンバー全員が不安でいっぱいでした。この作品は、酒井さんが比叡山延暦寺で得たインスピレーションから生まれた第1番《フローティング・フェイズ》に続く作品です。私は大津市の出身で、幼い頃から毎日のように琵琶湖の向こうにそびえる比叡山を眺めて育ったこともあってか、作品の輪郭が少しずつ見え始めると、音の粒子の中に、比叡山を包む澄んだ空気や光のきらめきのようなものを不思議と感じられるようになっていたというか。言葉ではうまく説明できない景色や感覚が、音でこんな風に表現できるのかと驚きの連続でした。メンバーと何度も試行錯誤を重ねていくうちに、その独特で神秘的な音の世界にどんどん引き込まれ、気がつけば4人とも夢中になって作品と向き合っていました。今振り返ると、あの濃密な時間がとても愛おしく、もう懐かしい思い出です(笑)。酒井さんの作品は今回の演奏会でも披露させていただきます。


    大阪国際室内楽コンクール最終日のカルテット風雅

     

    – 思い出に残るエピソードがあれば教えてください。

    落合 ヴィオラの川邉くんの楽譜です。曲によっては大学入学当初から使っている楽譜もあり、そこには先生方からいただいたアドバイスや注意点が、さまざまな色のボールペンでびっしりと書き込まれていました。色とりどりのまるで絵画のような楽譜がコンクールのライブ配信でアップに映される場面がありました(笑)。彼がこれまで積み重ねてきた学びの軌跡を、世界中の方々にも見ていただけたのではないかと思っています。

     

    – 今回のプログラムの聴きどころや、『ここに注目してほしい!』というポイントを教えてください。

    松谷 ハイドンの《騎士》は、4人それぞれの声部が生き生きと会話するような掛け合いが魅力で、古典派ならではの明快さや軽やかさを感じていただける作品です。ただメロディーと伴奏という役割にとどまらず、それぞれの声部が対等に響き合う面白さにも、ぜひ耳を傾けていただけたらと思います。
    バルトークの《弦楽四重奏曲第5番》は、民族音楽に根ざしたリズムや語法が随所に現れ、鋭いエネルギーと色彩豊かな響きが魅力の作品です。演奏するたびに新しい発見があり、私たち自身も何度向き合っても惹きつけられます。
    酒井健治さんの《弦楽四重奏曲第2番「フローティング・パーティクル」》は、現代作品ならではの繊細な音色や響きの変化が印象的な作品です。音の重なりや響きの移ろいにも、ぜひ耳を傾けていただけたらと思います。
    ベートーヴェンの《弦楽四重奏曲第12番》では、4つの声部が互いに支え合い、ときにぶつかり合いながら、一つの音楽を築いていく弦楽四重奏の醍醐味を感じていただけると思います。
    古典から現代まで、それぞれ異なる時代・作曲家ならではの弦楽四重奏の世界を、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。


    青山音楽賞授賞式にて、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第12番を演奏

     

    – 最も影響を受けた演奏家を教えてください。

    小西 私たちが最も影響を受けた演奏家は、カルテットとしてはやはり東京クヮルテットです。活動終了からすでに10年以上が経ちますが、日本出身の弦楽四重奏団として世界的な成功を収め、44年という長いキャリアを築いた彼らは、私たちにとってまさに理想であり、お手本のような存在です。 また、東京クヮルテットの先生方は私たちの師匠でもあり、そのご指導があったからこそ、現在のカルテットとしての活動が始まったと言っても過言ではありません。 特に私(小西)は、新しい曲に取り組む際、まず東京クヮルテットの演奏を聴いて学ぶことを習慣にしています。初めて譜面を開くときには必ず音源を聴き、その音楽への向き合い方や作品の捉え方を参考にしています。


    サントリーホール室内楽アカデミーにて先生方と


    – 今後はどのような活動を予定されていますか?

    落合 カルテットとして同じメンバーで歩み続けることは、決して簡単なことではありませんが、幸運なことに、私たちは今秋から約2年間、ドイツのハノーファー音楽演劇メディア大学(HMTMH)の室内楽科への留学が決まり、オリバー・ヴィレ教授のもとで学べることになりました。また、1stヴァイオリンを務める私(落合)は、カルテットのためにもソロとしての研鑽を大切にしたいという思いがずっとあり、今回の大阪国際室内楽コンクールを経験したことで、その気持ちがより強くなりました。その思いをメンバーに相談したところ、背中を押してもらい、室内楽科と並行して同大学のソリスト課程(国家演奏家資格課程)を受験し、今秋からドッペルスタディウム(二重在籍)という形で入学することになりました。カルテットとソロ、その両方を追求し、それぞれの経験を互いに還元しながら、音楽をさらに深めていきたいと思っています。
    留学期間中、カルテットとしては特にベートーヴェンの弦楽四重奏曲に集中して取り組む予定です。ヨーロッパへも演奏活動の幅を広げながら、さまざまな音楽祭やコンサートに出演し、現地でしか出会えない音楽家たちとの交流も大切にしていきたいです。そしていつか、京都のバロックザール、そして私たちがアカデミー生として学んだサントリーホールの「チェンバーミュージック・ガーデン(CMG)」で、ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲チクルスを実現することが、メンバー共通の大きな夢です。
    この留学を通じて、4人それぞれが何を感じ、何を学び、どんな景色を見て、音楽家として、人間としてどんな未来を歩んでいくのか。私たちが一歩ずつ前に進んでいく姿を、ぜひ温かく見守っていただけたら嬉しいです。


    キジアーナ音楽院夏期アカデミーにて

     

    – 留学先で楽しみにしていることはありますか?

    小西 やはり僕はビールですね。円安の影響もあり、海外では何かと物価の高さを感じますが、ビールに関しては500mlで1ユーロ未満のものも多く、日本より安く買える銘柄もたくさんあります。現地ならではのさまざまなビールを楽しめることを今から楽しみにしています。 また、ハノーファーにはHannover96というブンデスリーガ2部のクラブがあります。僕とヴィオラの川邊は、生粋のサッカー小僧なので、このチームの勢いには今まさにワクワクが止まりません。さらに、そこには日本人選手も2人在籍していて、同じように世界の舞台で戦っている存在がいるという事実に、強く心を動かされています。僕たちがカルテットとして挑戦を続けているその裏側で、サッカーの世界でも挑戦を続ける日本人がいる。そのことが本当に心強く、刺激であり、誇りでもあります。1人のサッカーファンとして、そして同じ挑戦者として、これからも全力で応援していきたいと思います。 Mamma mia‼️

     

    – 京都公演にお越しになるお客様へメッセージをお願いします!

    川邉 今回のプログラムでは、ハイドン、ベートーヴェン、バルトーク、そして酒井さんの作品を通して、それぞれ異なる時代の弦楽四重奏の魅力をお届けします。作品ごとに全く異なる音楽の世界を、私たち4人で一つひとつ丁寧に描いていきたいと思っています。
    昨年7月にバロックザールで演奏させていただいたご縁から、このたび再びこのホールで演奏する機会をいただき、とても嬉しく思っています。この一年は、青山音楽賞バロックザール賞の受賞、大阪国際室内楽コンクール、受験、そしてさまざまな演奏会など、多くの経験を重ねることができました。その中で、私たちは改めて弦楽四重奏の奥深さや、4人で音楽をつくることの難しさ、そして喜びをさらに強く感じています。
    私たちは、4人の調和を大切にしながらも、それぞれが確かな「個」を持ち、その個性が響き合うことで生まれる音楽を目指しています。そうした思いを大切に積み重ねてきたこの一年を経て、昨年の演奏会から私たちがどのように歩んできたのか、その時間の積み重ねも音楽を通して感じていただけたら嬉しいです。
    私たちにとって思い出深い京都の地で、皆さまと音楽の時間をご一緒できることを、メンバー一同心より楽しみにしております。ぜひ会場で、弦楽四重奏ならではの豊かな響きと対話をお楽しみください。

     


    2026年9月23日(水・祝)14:00開演 青山音楽記念館 バロックザール
    2025年度青山音楽賞バロックザール賞 受賞記念演奏会「カルテット風雅 リサイタル」

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    バロックザール賞受賞時に「完成度の高さと豊かな表現力を兼ね備えた若さ漲るカルテット」と高く評価されたカルテット風雅。さらに磨き抜かれたアンサンブルをどうぞお楽しみに!